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毒で人間さえ殺すヒアリの「意外な天敵」の正体 無敵生物VSアメリカ、勝つのはどっちだ?

東洋経済オンライン / 2021年9月23日 15時0分

1930年代にヒアリの侵略を許したアメリカでは、多くの人がヒアリの毒によって亡くなっている。経済的な損失も毎年60億ドルにのぼるという。

この非常にたちの悪い侵略生物を克服しようと、アメリカは大規模な農薬散布という撲滅作戦を1957年から82年にかけて断続的に展開した。

このとき散布された化学薬品が生態系に与えた影響は甚大で、当時のことは生物学者レイチェル・カーソンが『沈黙の春』に書いているが、結局、空からの一斉空爆ではヒアリを殺しきれなかった。それどころか、競争関係にあったほかの生物種を滅ぼしてヒアリの繁栄を助けてしまい、この根絶キャンペーンは後に「昆虫学のベトナム戦争」と揶揄(やゆ)された。

ヒアリはその学名のとおり、「征服されなかった」のだ。

しかし、一度は敗北したアメリカは、新たな撲滅作戦を考案した。それは「生物防除」と呼ばれる方法で、ヒアリの故郷から天敵となる生物を連れてきて、それを自律型の対ヒアリ兵器として連中にぶつけようというものだ。戦線に投入されたのは小さなハエだった。ただしそのハエは、もしヒアリたちがものを言えたなら、「悪魔」と呼ぶにちがいない、そんな存在だ。

■ヒアリの天敵「タイコバエ」

ハエの悪魔といえば、小説家ウィリアム・ゴールディングはその代表作で、狩られたブタの生首とそこから飛び立つハエの群れを、人間の内面に潜む悪魔になぞらえて「蠅の王」と表現しているが、このハエはそれよりもずっと直接的に悪魔であるといえる。なにしろ、その悪魔は、現実にヒアリの首を狩り、そこから飛び立つのだ。

そのハエの名をタイコバエという。南アメリカ大陸を原産地とし、ヒアリに寄生するノミバエの仲間だ。寄生といっても、最後には宿主を殺してしまうので、その性質は捕食に近く「捕食寄生」と呼ばれる。

タイコバエは匂いをたよりにヒアリの巣にやってくる。そしてアリの頭上でホバリングして隙をうかがい、ハイスピードカメラにしか写らないような電光石火の突撃で、アリの胸部に産卵管を差し込み、素早く卵を産みつける。

アリも巣穴に逃げ込んだり動きを止めてやり過ごそうとしたりするが、ハエはアリに対して1時間に100回以上も執拗に突撃を仕掛け、約3割の確率で産卵を成功させるという。

卵を産みつけられたアリはすぐに死にはしない。卵からふ化した幼虫は急速に成長し、2齢になるとすぐにアリの胸部から首を通って頭部に入り込む。幼虫が頭の中に入り込んでも、アリは生きたまま仲間たちと一緒に過ごしている。ただし、あまり餌を採りにはいかなくなり、攻撃性も低下するようだ。

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