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乗客は知らない新幹線「パンタグラフ」めぐる憂鬱 JR西、冬の朝のツラい「監視当番」をAIが代行

東洋経済オンライン / 2021年9月29日 6時30分

最新のN700Sでは「たわみ式すり板」を採用して架線への追従性を大幅に高め、集電性能の向上と長寿命化による省メンテナンスが図られた。足にあたる支持部を3本から2本に減らすことで、従来のN700Aと比べ1台あたり約50kg軽くなった。

■パンタグラフにまつわる“お悩み”

JR西日本ではパンタグラフをめぐって冬場特有の“お悩み”があったが、その解決にAI(人工知能)が一役買っているという。具体的にどういうことなのか、現在は鉄道本部車両部車両設計室担当課長の豊岡誠さんと博多総合車両所車両科(企画担当)係長の堤健太さん、鉄道本部車両部企画課の西田太郎さんに話を聞いた。

気温の低い冬の日の朝、走行中の電車のパンタグラフから激しい火花とともに「バチバチ」という音が聞こえてくることがあるが、原因となっているのが霜や氷が架線に付着していることで起きるアーク放電という現象だ。場合によってはすり板に穴が開く「溶損」が発生することがある。これを発見するための監視業務が従来、山陽新幹線の車両のメンテナンスを担当する博多総合車両所社員の大きな負担となっていた。

「すり板に穴が開いたまま走り続けると、変形によって架線を押し上げる揚力が強くて架線を切ってしまったり、逆に揚力が弱くなって集電がきちんとできなくなったりする。早く見つけないとその後の輸送トラブルにつながります」(堤さん)。車両側では集電に影響がない限り気づくことが難しいため、駅ホームの監視カメラを使って人の目で確認する必要があった。

パンタグラフ監視カメラは新神戸・岡山・広島の各駅に設置。冬になると博多総合車両所の社員が毎朝、映像をリアルタイムでチェックしていた。

「12月から3月にかけて毎日、朝6時から9時の間、あらかじめ決まった列車の停車時間になるとパソコンの画面で映像を確認していました。大きな溶損を発見した場合は、東京の指令に連絡して車両の交換の手配することになります」(西田さん)。

このパンタグラフ溶損専門の監視は、博多総合車両所のさまざまな現場から社員が持ち回りで「前超勤」して担当。60歳を超えるシニア社員は対象としておらず、1人当たりの負担は年々増す傾向だったという。早朝の勤務のため前夜から宿泊することもあった。

■AIが本格的に監視業務を担当

日立製作所と共同で開発したAIには、正常・異常、それぞれ多数の画像を学習させた。「正常画像は用意しやすいが、異常画像は少ない。正常画像のすり板に穴が開いたように加工して学習させた」(西田さん)という。十分な精度が確認できたことから、2020年の冬には車両所社員の当番制がなくなって、AIが監視業務を担当する体制に移行した。

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