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カマキリを入水自殺させる「寄生虫」の驚きの生態 生態系さえ変えてしまうハリガネムシのヤバさ

東洋経済オンライン / 2021年10月17日 17時0分

カマキリを入水自殺させる寄生虫とはいったい?(写真:ひろし58/PIXTA)

カマキリを酔っ払いのようにあちこち歩かせ、最終的に水場へと導いて溺れさせる寄生虫がいる。いったい彼らの目的とは? サイエンスライターの大谷智通氏による新刊『眠れなくなるほどキモい生き物』(イラスト:猫将軍)より一部抜粋・再構成してお届けする。

特に年の瀬が近づくと、忘年会からの帰りだろうか、千鳥足で歩く酔客をしばしば見かけるようになる。アルコールが大脳新皮質や大脳辺縁系を冒し、小脳にまで達しているのだ。大脳新皮質は理性を、大脳辺縁系は本能と感情を、小脳は平衡感覚を司る重要部位である。

そんな状態で電車に乗ろうとして、駅のホームから線路へ転げ落ちてしまう人が後を絶たない。そして、そこに間が悪く電車が入ってきて、ひかれて亡くなってしまう人も。

鉄道会社によれば、転落事故の約6割はこのような酔客によるものだという。転落する酔客の多くは、ホームの中心から線路に向かって歩いた際、端にさしかかっているにもかかわらず躊躇(ちゅうちょ)なく虚空に足を踏み出してしまうのだそうだ。

■カマキリが酔っ払って溺れ死ぬとき

自然界にいるカマキリが、一見これと似たような行動をとることがある。カマキリはまるで酔っぱらいのようにあちこちを歩き回り、川に近づいてなんら躊躇(ため)らうことなく水面へと脚を踏み出して、その中へと転げ落ちる。そして、そのまま溺(おぼ)れ死んだり、それを見つけた幸運な魚にパクリと食べられたりする。

もちろん、彼らはアルコールで酩酊(めいてい)しているわけではないが、その脳はある種の神経伝達物質のカクテルに冒されている。このカクテルをつくったものこそ、ハリガネムシという寄生虫である。

ハリガネムシは、線形動物から進化して分岐した類線形動物に属する生き物だ。成虫は長さ数十センチ、直径数ミリほどの細長い糸状の体をしており、体の表面がクチクラという硬い膜におおわれている。体節はなく、ミミズなどのように伸び縮みはしないが、グネグネとよく動く。その見た目がまるで「針金」のようだというのが名前の由来だ。


現在までに世界で326種、日本で14種が見つかっているが、種によって、カマキリやカマドウマ、コオロギ、キリギリスといった特定の昆虫を宿主とする。宿主の体内では体表から栄養を吸収して成長する。寄生しているのは幼虫で、成熟すると宿主の体からニュルニュルと脱出して、水中で自由生活を送るようになる。

私たちが比較的目にしやすい寄生虫で、秋口に道路上で車にひきつぶされたカマキリの傍(かたわ)らで、宿主と共倒れになったハリガネムシを見たことがある人もいるだろう。

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