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小田急多摩線を何度も往復「謎の回送列車」の正体 運転士が「基本中の基本」のブレーキ技術を競う

東洋経済オンライン / 2021年10月24日 8時30分

小田急多摩線を走ったちょっと不思議な「回送列車」の正体とは?(記者撮影)

東京郊外、多摩ニュータウンの足である小田急電鉄多摩線。10月中旬の2日間、同線をちょっと不思議な「回送列車」が走った。

回送なのに全部の駅に停車し、何度も線内を往復。そして先頭車両には複数の関係者の姿が――。実は、小田急が運転士を対象にした「自動制動」というブレーキでの運転技術を磨く競技会のための列車だったのだ。

自動制動というと最新式の自動運転システムのようだが、実際には古くからある「電車のブレーキの基本中の基本」(小田急運転士経験者)で、操作は近年の方式と比べて難しい。現在は装備している車両も減り、営業運転で使うことはないという。

今、そのブレーキテクニックを磨く機会をあえて設けた狙いは何だったのだろうか。

■今では珍しい「自動制動」

鉄道のブレーキはさまざまな方式があるが、基本となるのは空気圧によってシリンダーを動かし、ブレーキシューを車輪に押しつけるなどして停める空気ブレーキだ。

自動制動は空気ブレーキシステムの1つ。編成の全車両に貫通している「ブレーキ管」に空気圧を常時かけておき、この圧力を下げると逆にシリンダーに空気が送り込まれ、ブレーキがかかる仕組みだ。古くからある方式だが、走行中に連結が解けてブレーキ管が切れるといったトラブルがあっても、空気が抜けて圧力が下がり自動的に作動するため安全性・確実性は高いという。

ただ、操作性などの点から、主流はその後に登場した「電磁直通ブレーキ(電直)」に移行。さらに、現在は電気信号による制御で操作時の反応が迅速な「電気指令式」が全国的に多数派だ。

小田急もほとんどの車両が電気指令式で、自動制動を搭載しているのは1988年から1993年にかけて就役した1000形電車のうち、機器類をリニューアルしていない「未更新車」のみ。同車両の場合も「電直」との併用で、通常の運転には操作が簡単な電直を使い、自動制動は非常用だという。今回の競技会はこの車両を使った。

自動制動は車庫内などで訓練をすることがあるものの、20年以上の運転士経験者でも「営業運転で使ったことはない」(小田急CSR・広報部桐山良一さん)という。今回のように本線上で多くの運転士が参加し、実際に各駅に停車しつつ走る競技会を開いたのは初めてだ。

搭載車両も数少なくなった中でこのような機会を設けたのは、技術の伝承が大きな狙いだ。「若い運転士に車両の仕組みを理解する楽しさを、競技会という形で『わくわく』しながら知ってもらう場をつくりたかった」と、企画者で自らも長く運転士を務めた運転車両部の新井友章さんは説明する。

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