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それでもマツダが「自動運転レベル0」と表する訳 2022年発売「異常時対応システム」の超技術

東洋経済オンライン / 2021年11月4日 14時0分

今回、体験することができた「MAZDA CO-PILOT CONCEPT」(写真:マツダ)

再び、マツダ三次自動車試験場(広島県三次市)にやってきた。前回、訪れたのは2019年「ロードスター30周年ミーティング」のとき。「いってらっしゃ~い」と、2281台の「ロードスター」を、次の節目である40周年に向けてこの地で見送った。

あれから2年。今回も、実にマツダらしいクルマたちと触れ合うことができた。そして、「マツダのこれからの勝負処は、この『理念(コンセプト)』をマツダが貫き通し続けることができるかどうかにある」と感じた。

今回、三次を訪れた目的は、マツダの技術試作車に乗るためだ。

用意されたのは、艶消しブラック外装の「MAZDA3」。ボディサイドには「MAZDA CO-PILOT CONCEPT (コ・パイロット コンセプト)」とアンバー色の文字が入る。

一般的に「コンセプト」とは、モーターショーに出展されるような、量産する前のデザインスタディや技術開発車を指す。実際、CO-PILOT CONCEPTは技術面で、日産「プロパイロット2.0」、スバル「アイサイトX」、トヨタ「アドバンスドドライブ」、ホンダ「ホンダセンシングエリート」などと同じ、先進運転支援システムの仲間である。

マツダはこうした技術領域に対して、独自の「コンセプト(理念)」を持っており、CO-PILOT CONCEPTには、「先行技術開発車と理念」という2つの意味が込められていると、筆者は見る。

■マツダらしい「人」中心の運転支援

そもそもCO-PILOTとは、飛行機の副操縦士を表す言葉だ。マツダは「CO-PILOTがいつもそばで見守ってくれる、ドライバーが頼れる理解者(パートナー)であり、ドライバーから走る歓びを奪わない安心・安全を目指す」と解説する。

こうした表現に対して、なんとなく抽象的だという印象を持つ人も少なくないだろう。実際、これまでマツダが自動車関連の学会やシンポジウムでCO-PILOT CONCEPTの概要を紹介すると、視聴者からは「志には賛同するが、具体的に何がどう同業他社と違うのが少しわかりにくい」という声が聞こえていた。

筆者自身にもそうした思いがあったが、今回の実車体験によってCO-PILOT CONCEPTへの理解が深まり、これまで抱いていたモヤモヤ感が一気に解消できた。

なぜならば、CO-PILOT CONCEPTが国の規定する「ドライバー異常時対応システム」の最新バージョンであると同時に、実にマツダらしい「人」中心の運転支援であることがわかったからだ。

では、CO-PILOT CONCEPTの試乗体験を詳しく紹介していこう。

CO-PILOT CONCEPTの試乗体験は、しょっぱなからかなり強烈なものだった。時速80kmで高速周回路の直進部分を走行中に、「ぐったり寝てください」と言われたのだ。

「居眠り検知」を作動させるため、故意にちょっとうつむき加減で目を閉じて、両手をハンドルから離し、アクセルを踏む力も一気に弱めた。

すると、3秒前後でCO-PILOT CONCEPTが作動。ホーンが鳴り、ハザードライトが点き、さらにブレーキランプが点滅しながら、高速道路等の自動車専用道での最低速度である時速50kmまで自動で減速して、まるで自動運転のようなクルージングが始まった。

この状態で「マツダらしさ」を感じたのは、ダッシュボード中央の画面とドライバーの目の前のインパネ中央部で、CO-PILOT CONCEPT作動中を示す、外装ロゴ等でも使用しているアンバー色の表示だ。この表示には、筆者の想像通りマツダデザイン本部による”かなりのこだわり”があるという。

そして、時速50kmまで減速したCO-PILOT CONCEPTはその後、システムが最寄りの非常退避場所を地図情報から自動検索し、車載カメラが周辺状況をリアルタイムで把握して、ハンドル操作を行ってスムーズに完全停車した。

マツダによると、高速道路の設計要件から非常停車帯の設置間隔を考慮し、今のところは時速50kmでの緊急自動走行時間を約3分間までとしている。

■急病を想定して「倒れ込んでください」

また、車線変更時に隣の車線に接近車両がある状況も体験した。

CO-PILOT CONCEPT搭載側での体験に加えて、接近車両側にも同乗してCO-PILOT CONCEPT搭載車の動きを外から確認することもできたが、ハザードライトやブレーキライトの点滅以外にも、何らかの形で異常を外部に強く知らせる工夫が必要だとも感じた。

そのほか、CO-PILOT CONCEPT車内で意識喪失や急病が発生したことを想定して、「今度は倒れこんでください」とも言われた。車内中央方向に対して、上半身を一気に倒れこませるというシチュエーションだ。

この場合でも居眠り運転時と同じように、スムーズに自動減速して最寄りの非常停車帯で完全停止した。そして、停車後はヘルプネットを通じて、自動的に救急車等の出動を要請する。

次に、一般道路を模したワインディングコースに場所を移し、高速周回路と同じように居眠りや体調急変の状態を想定した走行を行ったが、このシチュエーションでは約60秒間、安全な速度維持を行いながら、非常退避場所に停止した。

約60秒間の速度維持は、事故のリスクが高い交差点内を抜けることを想定したもの。最も大きな交差点が約150mあるとして試算した結果、設定されたのが60秒という時間なのだ。

また、同乗者がドライバーの体調急変に気づいた場合、天井の緊急作動スイッチを押して車両を完全停止状態とするシーンも体験した。

こうしたシステムは、バスなどでは採用されているが、乗用車ではまだ量産化されていない。

以上のような、高速道路および一般道路でのクルマの動きは、国土交通省がまとめた「第6期先進安全自動車(ASV)推進計画」(2016~2020年度)のガイドラインに沿った内容だ。正式名称は「路肩退避型等発展型ドライバー異常時対応システム」と呼ばれ、技術要件と課題要件が示されている。

その中では、ドライバーの体調急変時など、緊急時におけるシステムの稼働(クルマの動作)を道路交通法や道路運送車両法の中でどう捉えるかも議論されている。

■「自動運転レベルには未相当」というマツダの理念

今度は、「クルマのふるまいを見ていただきたい」と言われ、ワインディングコースで両手をハンドルから、両足をアクセルとブレーキから完全に離した、いわゆる自動運転状態で走行した。これは、完全停止後に病院へ向かう緊急移動など、将来的な導入を視野に入れた開発要件である。

このシチュエーションでは、両手両足を離した状態でもドライバーは「すぐに運転の復帰をする準備ができている」と言えるから、一般的な解釈でいえば自動運転のレベルは「レベル3」に相当する。

CO-PILOT CONCEPTは、この状態で道路標識を認識しながら直線では時速60kmまで一気に加速し、またコーナーでは適宜、減速していた。クルマの動きは極めてスムーズで、過度に周囲に注意を払ったようなまったりとした退屈感はなく、クルマとしての「ふるまい」から「走る歓び」が感じ取れた。

こうした状態に対して、後席に同乗した開発担当者は「あくまでも将来を見越した技術を体感していただくもの」という前置きをしたうえで、ドライバー異常時対応システムという観点では「CO-PILOT CONCEPTの自動運転レベルはゼロだ」と説明した。

この「自動運転レベルゼロ」という表現は、技術的な解釈としてではなく、どんなに高度な運転支援システムを搭載しても、「運転の主役は人である」というマツダの開発理念を強調するため用いた言葉であると、筆者は理解している。

今回の技術試作車には、車載センサーとしてルームミラーの前に3つの画像認識用カメラが搭載されている。前方100m強を認識するカメラから、3段階で広角に対応するものだ。

画像認識技術について、筆者は関連する半導体の設計を行う海外2カ国の企業・開発拠点を訪問しており、詳しい説明を受けている。この技術を、マツダは部品メーカー等と協力し、チューニングしているという。

そのほか、前後パンパー/ボディサイド/サイドミラー/ルーフに計9個のカメラ、前方向けに77GHz帯域のミリ波レーダー、車体四隅に24GHz帯域のミリ波レーダー、さらに車体周辺2~3mの範囲をカバーするソナー(超音波センサー)を装備する。

また、国が産学連携で開発した高精度3次元地図「ダイナミックマップ」の要件にあった地図情報を活用するなど、技術スペックでは自動運転レベル3以上に対応可能であることがわかった。

試験場内の別施設では、広島大学と共同研究する脳科学を用いたシステムの説明も受けた。これは、視線挙動からドライバーの異常予兆を検知するものだ。

試乗後に意見交換した、CO-PILOT CONCEPTの全体を取りまとめるマツダ商品戦略本部・主査の栃岡孝宏氏も、技術試作車内でエンジニアが「自動運転レベルゼロ」と表現したのと同じような見解で、「マツダとしては既存の自動運転レベルにこだわらない」という持論を述べた。

■2022年、新型「MAZDA6」「CX-60」で市販化か?

自動運転レベルについては、運転の主体をドライバーであるとするレベル2までと、運転の主体がクルマのシステムに移行するレベル3との間に、技術面やコスト面での大きな壁があると言われて久しい。

そうした中、自動運転や先進運転支援に関する技術と法整備が着々と進み、メーカー間での「競争領域」が、単なるスペックや機能から「技術に裏付けされた企業としての理念」に移ったことを、今回の体験で強く感じた。

CO-PILOT CONCEPTは、2022年に「CO-PILOT 1.0」としてドライバーの異常検知や居眠り検知により、高速道路での路肩退避と一般道での路肩移動を含めた車線内減速停止機能を搭載して量産されるという。

マツダがラージ商品群と呼ぶ、FR(後輪駆動車)をベースとする新型「MAZDA6」や「CX-60」から導入されるだろう。

また、2025年には次のバージョン(CO-PiLOT 2.0?)として車載センサーを増やしたうえでECU(制御システム)を新設し、前述した脳科学分野の知見も取り入れた進化型の量産を目指すとしている。高速道路と一般道で、非常停車帯退避を可能とする計画だ。

桃田 健史:ジャーナリスト

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