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HIS、わずか1年で2度目の「コロナ増資」に走る事情 背景には5年以内の神谷町本社買い戻し計画も

東洋経済オンライン / 2021年11月13日 9時0分

店舗の統廃合に加えWeb販売を磨くなど、ビジネスモデル改革も進めている(編集部撮影)

海外旅行が「消失」したコロナ禍で、2度目の増資となった。

旅行会社大手、エイチ・アイ・エスは11月2日、第三者割当増資と新株予約権の発行で、最大215億円を調達すると発表した。第三者割当増資はアジア系投資ファンドに、新株予約権は同ファンドと澤田秀雄会長に対して割り当てる。

■まだ債務超過にはならないが…

HISは昨年も第三者割当増資を香港のファンド、新株予約権を同ファンドと澤田会長が引き受ける形で222億円を調達。ほかにも三井住友銀行などと330億円のコミットメントライン(融資枠)を締結するなど、精力的に資金調達を進めてきた。

また、店舗統廃合や人員出向などのコスト削減に加え、ホテル出店をはじめとする投資計画を大幅に縮小。9月1日には、2020年入居の神谷町(東京・港区)本社を324億円で三井住友ファイナンス&リースの子会社に売却している。

本社売却で調達した資金を含まない2021年7月末時点でも、現金及び預金は977億円(前年同月末は952億円)あり、「当面の資金は確保している」(IR室)との認識だ。7月末時点の自己資本も823億円で、自己資本比率は14.4%。直ちに手当てが必要という状況ではない。

それでも資金確保を急ぐ背景には、複数の事情がある。

まずは業況の厳しさだ。

主力の海外旅行は現在、コロナ前の2019年度に毎月250億~470億円を記録していた取扱高が毎月数億円レベルの異常事態が続く。10月30日に発表した2021年10月期の通期業績予想も売上高1250億円、最終赤字530億円と厳しいものだった。

渡航制限の緩和が進まず、海外旅行の低迷が長期化すれば、財務を毀損するリスクは高まる。また、アフターコロナに向けた投資資金も確保しなくてはならない。早期に資本増強策を打つ必要があった。

■調達の難航をうかがわせる記載も

さまざまな手を探る中、ファンドから提案があったのは9月の本社売却の直前だったという。ファンドが提案したのは第三者割当増資、新株予約権とも3回に分割して割り当てる手法だ。

資料には「3回に分割された資金調達方法ではあるものの、1回で本件と同規模を引き受けられる割当先も現状見つかっていないことも踏まえると、当社が選びうる現実的な選択肢~」とある。澤田会長への割り当てもファンドが要請したもので、「コミットを求める」ということだろう。どうやら引き受け先探しは難航していたようだ。

もう1つ、財務制限条項の存在もあった。

HISはシンジケートローン345億円について「①期末の純資産を前期の75%以上に保つ」「②2期連続の経常赤字を避ける」との条項を課されている。2期連続の経常赤字となり条項に抵触したとみられるが、銀行と交渉を重ねている最中だという。

もちろん、返済を猶予されたとしても財務の健全化に向けた努力は求められる。HISとしても、今回の増強策は①について「自助努力を示すものと判断しております」と説明している。

それでは調達した215億円(手取りで214億円)は何に使うのか。うち115億円は仕入れや人件費、広告宣伝費、子会社への貸し付けなどの運転資金とする(支出予定時期は2022年4月まで)。また、49億円は社債の償還に充当する予定だ。

興味深いのは、売却したばかりの本社を買い戻す方針を明らかにしたことだろう。HISは調達資金のうち50億円を、5年以内の買い戻しに向けて積み立てる。外部への資金流出を軽減させる目的だという。

そもそも、2020年の西新宿から神谷町への本社移転は、分散していた業務フロアの集約やフリーアドレス制の導入、働き方改革の実行などを狙った一大プロジェクトであると同時に、賃借料を削減する点も大きなポイントだった。

2019年の東洋経済のインタビューで、澤田会長は「お金だけ持っていても今は金利では稼げない。不動産なら物件さえきちんと買えば5~7%ぐらいで回る。近年は運用利回りを出そうとして不動産を買ったり、ホテルを建てたりしている」と、経営効率の観点から、「持つ経営」を重視する方針を語っていた。本社についてもこうした考えがベースにあるようだ。

■当面は我慢の経営が続くか

国内は緊急事態宣言が明け、新規感染者数も激減した。今後、ハウステンボスの入場者数やホテルの稼働率も底を脱するとみられる。小規模ではあるが、昨年来注力してきた国内旅行の獲得も進むだろう。

ただし、業績の本格復活には収益柱の海外旅行が欠かせない。HISは今後の見通しについて、2022年から渡航制限が徐々に緩和され、旅行者数が段階的に回復すると読む。渡航先としてはまず、アメリカ本土やハワイ・グアム方面が立ち上がると想定している。2023年10月期は通期でコロナ前である2019年の水準まで回復する見立てだ。

今回の調達で一定程度の資本増強にメドをつけたが、海外旅行の明確な復活時期は見通せない。視界不良の中で財務基盤を固めつつ、どう復活と成長に向けた手を打つのか。しばらくは我慢の経営が続きそうだ。

田邉 佳介:東洋経済 記者

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