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医療・介護・福祉の公的価格引き上げは成長に逆行 岸田首相「新しい資本主義」の本気度が試される

東洋経済オンライン / 2021年11月19日 7時0分

新しい資本主義実現会議で発言する岸田文雄首相(左端)。左から2人目は山際大志郎経済再生担当相、10月26日の第一回会合(写真:時事通信)

「新しい資本主義実現会議」は8日、当面の経済対策や税制改正へ向けた緊急提言案を取りまとめた。岸田首相が強調してきた「分配戦略」の文脈では、「金融所得課税」のような課税強化策は盛り込まれず、「賃上げ税制」といった施策が中心となった。第2次安倍政権のときから「賃上げ」はデフレから脱却するという「成長戦略」の文脈でも重視されてきた経緯があり、「分配戦略」なのかどうかは疑わしいうえに、「賃上げ税制」は第2次安倍政権下で創設されているので、目新しさもない。

このような「成長と分配」の「混同」は11月9日に行われた経済財政諮問会議でも散見された。民間議員が提出した資料によると、「リスキリング」(学び直し)の推進によって「誰もが何度でもチャレンジできてやりがいのある社会、格差が固定化しない社会を構築できる」と分配の文脈で説明された。この解釈は筆者にとって目からうろこであった。しかし、「リカレント教育」や「リスキリング」はこれまでの政権が主張していたように「成長戦略」だろう。

■看護・介護・保育士の給与引き上げが焦点

さまざまな政策を具体化する中で、岸田首相の色は薄まりつつあり、「新しい資本主義」が「どこへ行こうとしているかまだわからない」(内閣官房幹部)という声も生じているとのこと(朝日新聞、11月9日付)。だが、首相周辺によれば看護や介護、保育で働く人たちの給与引き上げを中心とした「公的価格の引き上げ」に対する岸田首相の「思い入れは強い」(同、11月10日付)という。

この政策こそ、かなり「分配政策」の面が強く、「成長戦略」とは距離があると、筆者は考えている。財源が決まっておらず、政策の最終的な形は定まっていないものの、この政策が広く受け入れられるかどうかが、「新しい資本主義」の成否を占うことになるだろう。

今回のコラムでは、「公的価格の引き上げ」が経済に与える影響を議論することで、「新しい資本主義」の考え方に迫っていく。

結論を先に述べると「公的価格の引き上げ」によって、介護・医療・福祉業そのものの生産性を引き上げ成長率を押し上げることは、いくらかは期待できるものの、これらの産業に従事する人が増えることで、マクロレベルでは日本経済の生産性が低下する可能性が高い。介護・医療・福祉のサービス充実と、これらに従事する人の待遇を改善することと引き換えに、いったんは経済全体の生産性を犠牲にすることになるだろう。

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