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「第3の歴史決議」で見えた習近平の権力と脆弱性 「中国の特色ある社会主義」とは共産党一党独裁

東洋経済オンライン / 2021年11月23日 6時30分

そして、決議文は中国社会の将来像を示す代わりに、党への服従を国民に強く求めている。

■鄧小平は分権を進め、習近平は自らへ権力を集中

「党中央による集中的・統一的指導は党の指導の最高原則であり、それを強化・擁護することは全党共通の政治責任」
「党の指導を堅持するには、全党の中央への服従を確保しなければならない」
「個人主義・分散主義・自由主義・自己本位主義・事なかれ主義などを防ぎ、それに反対する」
「面従腹背する者を一掃し、全党が政治的立場、政治的方向、政治的原則、政治的道筋において党中央と高度の一致を保つ」

毛沢東への権力集中への反省から、鄧小平は形式的な面もあったものの、権力集中を改め集団指導体制を取り入れるなど、政府と党の役割分担を明確にする分権を進めた。しかし、習近平氏はその逆を突き進んでいる。

2017年の党大会で習近平氏は「党政軍民学、東西南北中、党はすべてを領導する」と発言して大きな話題になった。その後、習近平氏は強力にそれを実践し、党への権力集中、習近平氏への権力集中を徹底的に進めた。今回の決議文は党や習近平氏への権力集中をさらに進めようという姿勢が明確に出ている。

もちろん権力集中は内政問題だけではない。決議文には「党が対外活動を指導する体制・仕組みを整え、対外活動でのトップダウン設計を強化し、中国の特色ある大国外交について戦略的構想をうち出す」とか、「中国の特色ある強軍」などという表現も登場している。

こうなると、外交交渉の場ではたとえ王毅外相であっても党が決めた方針をオウム返しで繰り返すことしかできなくなる。双方の妥協や譲歩によって合意形成を目指す外交は中国政府相手では成り立たなくなってしまう。

■ナショナリズムや民族主義の称揚は不安の裏返し

「中国の特色ある社会主義」のもう1つの特徴は、社会主義というイデオロギーと中国の伝統や文化との融合を強調することによって、ナショナリズムや民族主義を強調している点だ。決議文では「人類の歴史上、外部の力を当てにし、外国のモデルをそのまま取り入れ、人の後についてまねばかりすることで強くなり栄えた民族や国家は1つもない。そのようなことをすれば、失敗をなめるか、従属国になるよりほかはない」などと民族性の重要性を繰り返し強調している。

中国は西側諸国の自由、民主主義などの普遍的価値を強く否定、批判し続けている。香港に対する一連の対応が示すように、民主主義的潮流が中国国内に広がれば、それが共産党一党支配の否定につながることを理解しているからであろう。

ここから浮かび上がってくるのは、共産党指導部の強気の姿勢とは裏腹の一党支配の維持、継続への不安ではなかろうか。共産党は毛沢東時代には抗日戦争や国民党との内戦の勝利、そして建国という歴史とそれらを支えてきたイデオロギーでその支配の正統性を獲得してきた。次の時代の中心人物の鄧小平は「改革開放路線」による経済成長によって正統性の確保に成功した。

しかし今、中国は経済成長に陰りが見えはじめるとともに貧富の格差拡大など数多くの深刻な社会問題を抱えている。共産党がこれから先、一党支配の正統性をどうやって確保するのかは悩ましい問題であろう。

定義の不明な抽象概念の乱用と、ナショナリズムや民族主義を煽って党や習近平氏への忠誠心を国民に強いる今回の決議文からは、習近平氏の圧倒的な権力の強さと同時に、共産党一党支配が抱える脆弱性も読み取ることができる。

薬師寺 克行:東洋大学教授

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