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8月の「人流5割削減」提案が示唆する大事な教訓 第6波に向けて分析体制をどう構築したらいいか

東洋経済オンライン / 2021年11月25日 7時0分

7~8月の東京のように、現役世代に毎日大量にワクチン接種を打っておりそれが継続すると見込まれる局面では、ワクチン接種を考慮するか否かは今後の見通しに大きな影響を与えると思われる。しかしながら、ABの実効再生産数プロジェクションがワクチンの感染拡大抑制効果を考慮し始めるのは感染減少が本格化した後の9月1日からである。6月30日から9月16日までに提示されていた病床プロジェクションでは再生産数は外生的でありワクチン接種に影響されない。

学術的に質の高い分析を遂行するには膨大な時間と労力が必要である。国民の生活に多大な影響を与えるコロナ政策に関わるABに提出された分析は、将来さまざまな角度から検証される。そういった検証に耐えうる分析を世に公表するためには、膨大な時間が必要であり、真摯な研究者であればあるほど慎重な姿勢を取るであろう。

従って、ある特定の重要要素が考慮されていないということが発生することは自然であり、それを批判するようなことは決してあってはならない。筆者自身も過去にタイムリーに新しい要素をモデルに組み込めなかったことは何度もあるし、現在でもモデルの改善すべき部分の多くを改善できていない。純粋な学術研究の世界と違い、目の前の意思決定に役立つことを目指したリアルタイムの政策分析の世界では機敏性が求められるため、「重要要素が加味されていない」ことは頻繁に起きる。

また、シンプルな見通しからも学べることは実は多く、重要要素が盛り込まれているが質の低い分析よりも参考になる。筆者自身もAB3-3の学術的完成度の高いさまざまな分析を常日頃から参考にさせていただいており、また過去には共有していただいたコードから多くのことを勉強させていただいたこともある。

当然だが、現役世代にワクチン接種が急速に進んでいる局面においては、接種を考慮していない見通しは悲観的になる。人流5割削減は多くの人々にとって大きな生活の犠牲を意味したと想像する。8月中旬以降、多くの人流データは下げ止まる、もしくは増加傾向に転じた。このことは、5割削減提案が必ずしも多くの国民の心に届かなかった可能性を示唆している。AB・分科会がワクチン接種を考慮した見通しも眺めつつ議論していたら、数値目標に説得力が加わり、より多くの人々に納得してもらえる提案につながったのかもしれない。

■今後の分析体制

ここまでの論考を簡潔にまとめると以下のようになる。(1)人流5割削減という数値目標は当時存在していたさまざまな分析と整合的である。(2)もしもワクチン効果を考慮していない見通しを参考にしていたのならば、必要以上に大幅な人流削減を提案してしまっていたかもしれない。

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