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納得の「サプライズ社長人事」映すドコモの現在地 新体制下で「iモード時代の復活」期待する声も

東洋経済オンライン / 2024年5月16日 7時20分

今後、前田氏にとくに期待される役割が成長領域の拡大だ。「スマートライフ、グローバルと、新たな事業分野でのドコモの挑戦は続く。新たな事業を牽引してきた前田さんが、それをさらに飛躍していくことが非常に重要だ」(持ち株の島田社長)。

ドコモは2021年秋に発表した「新ドコモグループ中期戦略」で、金融や法人などの事業を成長領域に位置づけ、2025年度に営業収益全体に占めるスマートライフ、法人事業の比率を50%以上、法人事業単体の営業収益を2兆円以上とする目標を掲げた。

前2024年3月期決算では、柱の個人向け通信が減収減益となる一方、全体の営業収益は6兆1400億円(前期比1.3%増)、営業利益は1兆1444億円(同4.6%)と、2期連続で増収増益だった。

うち、法人の営業収益は1兆8817億円(中期戦略を発表した2022年3月期実績は1兆7195億円)となり、2年後の「2兆円」は射程圏内だ。スマートライフの営業収益は1兆0908億円(同9604億円)、全体に占める法人とスマートライフの割合も48.4%(同45.7%)に高まり、堅調に目標水準へと近づいている。

立て続けの他社提携に銀行参入説も

法人事業については、組織再編でコムにその機能を集約したことが奏功している。一方、前田氏が主導してきたスマートライフは積極的なM&Aを進めながら、規模の拡大を図る戦略だ。

昨秋以降、マネックス証券やオリックス・クレジットといった金融事業者を連結子会社化する巨額投資を行ったほか、4月にはアマゾンとのdポイント連携も発表。業界では、銀行事業に参入するのではないかとの見方も多い。

7月からは、個人向け通信とスマートライフを一体運営する組織改編も実施し、前田氏は今後、こうした施策を着実に業績へと結びつけられるかが問われそうだ。

今回の社長人事によって、成長領域に邁進する姿勢を改めて明確にしたドコモ。一方、グループ内や総務省の関係者が不安視するのは、本業であるはずの個人向け通信だ。

昨年はドコモの通信品質をめぐり、「つながりにくい」といったユーザーの声が相次いだ。コロナ禍で減少した人流の回復を見込みきれなかったことや、競合他社と違って4G向け周波数を5Gに転用する戦略をとらず、5G基地局の整備が遅れたことが原因だった。

競合するKDDIの高橋誠社長は同じ日に開いた決算会見で、「(非通信の)『グロース領域』に強い前田さんが社長になるということは、しっかり注目していかないといけない」と警戒感を示しつつ、「やはり、ベースは通信なので、われわれとしては通信を充実させる。今後の5G展開、衛星との連携が重要だ」と強調。対ドコモを念頭に、通信品質面での差別化を図りたいとの考えをにじませた。

通信品質問題に前田氏も言及

非通信分野の成長は、経営戦略として重要性を増しているとはいえども、国民生活にも直結する根幹の通信事業がおろそかになってしまえば本末転倒だ。国内最大の携帯キャリアであるドコモにとって、通信品質で競合他社に差を広げられることになれば、ブランドイメージを大きく損ないかねない。

前田氏も記者会見の場で、通信品質の問題に自ら言及した。「いま一度当たり前に立ち返り、お客様起点での事業運営を進めたい。通信品質へのご不満やサービスの使い勝手など、1つひとつの声と誠実に向き合い、解決していく。もっと支持、信頼されるドコモグループにしていく」。

強みとする非通信事業の成長だけでなく、本業でのドコモユーザーからの信頼回復を両立できるのか。前田氏には、バランスを意識した難しい舵取りが試されることとなる。

茶山 瞭:東洋経済 記者

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