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日本政府が防衛費を上げる前にやるべき3つのこと 陸自予算の削減、新戦闘機開発の中止、耐震改修…

東洋経済オンライン / 2024年6月2日 8時0分

防衛省界隈でも内心ではそう考えている。F-35を超える性能を実現できるか。F-35よりも安くなるのか。NAGDよりも早く納品できるか。それを聞いても口ごもるだけだ。ポジション・トークとしても、「見込み」と予防線を張るしかない。

結局、完成してもいいことはないし、いつ完成するかもわからない。それなら早期に手仕舞いしたほうがよい。現段階の日本支出1.4兆円、3倍に膨張するとすれば4.2兆円が節約できるのだ。

3つ目は、耐震改修を取りやめることだ。防衛省は大規模な耐震改修事業に着手している。その額は24年度だけでも3200億円に及ぶ。これは不要な事業だ。当然だが中国対策ともなりえない。

こう言えば、突飛な話に聞こえるかもしれない。確かに自衛隊の建物は老朽化しており、耐震性も確保できていない。そのような内容の報道は多い。

自衛隊施設の耐震改修も不要

しかし、やめても大した問題はない。隊員が勤務している建物に関しては耐震性は確保済だからである。

耐震性が疑わしい建物も、確かにいくつか残っている。戦争中や戦後の進駐軍向けに作った木造建築は危険である。ただ、勤務場所としては使っていない。武道場や、不要品をしまう物置に使う程度だ。

このような建物は、本来は存在してはいけない幽霊物件だ。いずれも鉄筋コンクリートで建て替える際には取り壊す予定のものだった。それを「もったいないから」と残しただけだ。

しかし、そのような幽霊物件に2024年度には3200億円もの予算をつけている。老朽化と耐震対策の名目だが、実際には防衛費を使い切れないためだろう。

今の防衛費は防衛産業の生産力を超えている。武器弾薬の買い増しを理由に従来の5兆円から7~9兆円まで増やしたが、工場の生産規模拡大は防衛費増額に追いついていない。

そのため防衛施設産業、つまりは建設業への発注増で予算の使い切りを狙った形である。だからこそ、中止しても差し支えはない事業なのである。

以上の3支出を見直せば、防衛費は従来と同じ予算規模に収まる。2024年度予算であれば陸自支出を推定3兆円から、従来の海空と同額である1.2兆円に抑える。

そのうえで2024年分の新戦闘機開発経費700億円、耐震補強の3200億円の支出を取り去ると従来額の5兆円台となる。

情報本部や防衛装備庁にも調整の余地あり

それでいて中国対策は強化となる。海空自衛隊向けの支出は6割増のままだからだ。敵国攻撃用のトマホークやJASSMミサイル(空対地スタンドオフミサイル)の購入数も増やせる。それらを収容する弾庫整備もそのまま進められる。

それ以上の縮小も可能だ。予算配分では陸自以外も見直すべき対象はある。情報本部や防衛装備庁にも調整の余地はある。人材育成の成果は上げているものの、防衛大学校や防衛医科大学校への配分も再考すべき余地がある。

装備調達の問題も新戦闘機に限らない。国産品は全体を見直したほうがよい。とくに武器については、概ね海外製のほうが優れている。低価格であり信頼性もあり開発費もいらない。扱う自衛官でさえも海外製のほうが好ましいと考えている。

施設も耐震改修の取りやめだけではない。基地の整理統合による予算節減は可能である。また基地内での居住制度を廃止すれば、隊員が住む生活隊舎も廃止できる。人口減少に伴う自衛隊縮小や募集難からすれば、将来的には基地整理や隊舎廃止は避けられない。それなら先手を打ったほうがよい。

文谷 数重:軍事ライター

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