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ロッキード・マーティンが自衛隊に狙う次の一手 新レーダーや垂直発射装置のビジネスチャンス開拓に熱

東洋経済オンライン / 2024年9月19日 10時0分

さらに、ASEVのコスト膨張の懸念も高まっている。現在、防衛省の試算では、ASEV2隻分の取得経費は7839億円(1隻当たり約3920億円)に及ぶ。

導入を決定した2020年当時に防衛省が想定していた「1隻当たり2400億円~2500億円以上」と比べ、約1.6倍も増えている。防衛省は円安や物価高の影響などを理由に挙げている。このうち、SPY7の取得契約額は約350億円、イージスシステムが約1382億円となっている。

財務省も2023年10月、ASEVのコスト膨張への懸念を示した。「日本が搭載予定のSPY7レーダーは、地上固定式レーダーとしてはアメリカで導入実績があるものの、艦載用としては例がない(スペイン及びカナダはSPY7艦載を計画中であるが、弾道ミサイル迎撃用ではない)ため比較が困難」と指摘する。

「今後多数調達が見込まれるアメリカの次期イージス艦は、別のSPY6レーダーを採用予定であるため、SPY7レーダーの補用品や本体価格にはスケールメリットが働きにくい」と警鐘を鳴らした。

ASEVをめぐる将来のコスト増大が懸念される中、木原稔防衛相と鈴木俊一財務相は2023年12月、今年度防衛予算の大臣折衝でASEVについて協議した。そして、①実効的なプロジェクト管理体制の構築を図ること、②イージス艦のこんごう型4隻の更新など今後イージス艦を取得・更新する場合にはその搭載レーダー選定について白紙的に検討することで一致した。

財務省は、こんごう型の後継となるイージス艦のレーダーとして、コスト増大が想定されるSPY7を前提にするのではなく、「白紙的に検討する」ことを防衛省に求めることで、SPY6レーダーの採用も改めて視野に入れるよう防衛省に釘を刺したとみられる。

なぜならば、大きな理由としては、日米同盟強化の方針下でアメリカ海軍との相互運用性が求められる中、仮にこんごう型後継艦にSPY7を採用することになればコスト減に向けたスケールメリット(規模効果)が働きにくくなる可能性があるからだ。

また、ASEVの構想から廃棄までの総費用「ライフサイクルコスト」について、防衛省は「アメリカなどと調整し、詳細な金額の積算を進めているところであり、具体的にお答えできる段階ではない」と述べるにとどまっている。

相互運用性やコスト面でどれだけ有利か

レーダーの高性能は保証付きでも、相互運用性やコスト面でどれほどの優位性を説得力を持って示されるのか。LMにとって正念場となる。

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