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15年ぶりに全線開通「阿里山林業鉄道」車両の中身 災害や資金難を乗り越え、再始動までの道のり

東洋経済オンライン / 2024年9月21日 7時0分

2009年8月、台風8号が阿里山を襲い、48時間で、2361mmの雨量を記録。世界記録(2493mm:1995年インド・チェラプンジ)に匹敵する量が降り続いた。阿里山鉄道は421カ所で土砂災害のため不通となり、長期にわたる運休を強いられた。

2015年に復旧作業の見通しがつき全線開通が実現すると思われた矢先、阿里山鉄道は再び台風に襲われる。

大規模な土砂崩れの発生で線路下の基礎部分が流失し、本線の約4分の3にあたる区間運行を余儀なくされた。政府は復旧のため、23億台湾元(約113億860万円)を支出、新たにトンネルを掘削するなどの対応を進めた。

開通日は「ナローの日」

そして今年4月。「7月1日に全線開通予定」と発表されたが、6月の鉄路局の検査で不具合が指摘され、全線開通は7月6日に延期。座席が販売されたのは、全線開通の4日前。7月2日の午後2時だったが、7月6日から10日までの座席はわずか20分弱で完売となった。

なお、開通日となった7月6日は奇しくも日本では「ナローの日」。ナローとは「ナローゲージ」のことで、ゲージ(左右のレールの間隔)が国際標準の1435mmよりも狭い(ナロー)鉄道のこと。日本の鉄道では、JRが採用している1067mmよりも狭いゲージの鉄道を指す。

日本語が堪能な台湾の鉄道ファンがこのことをSNSに投稿すると、762mmゲージの阿里山鉄道の復活を祝うのにぴったりだ、と台湾の鉄道ファンの間で大いに盛り上がった。

以前からこの鉄道を知っている方は、「阿里山『森林』鉄道の間違いでは?」と思われるかもしれない。確かに、かつてはそう呼ばれていた。しかし2018年7月1日からは「阿里山林業鉄道」に名称変更されている。

名称変更の背景には、災害だけでなく、時代の流れによる行政間の所管問題や資金難などがあった。

1945年に日本統治時代が終了すると、阿里山鉄道は日本の林野庁にあたる林務局の所管となった。

林務局は2008年からBOT方式により民間に運営を委託したが、2010年には運営委託契約を打ち切っている。民間事業者による台風被害への復旧対応が不十分だったためだ(なお契約を打ち切られた民間事業者はこれを不服として林務局を提訴。長年にわたって裁判で争われた末、2021年に和解した)。

2010年の契約打ち切り後は再び林務局が阿里山鉄道を所管。そして2014年からは台湾鉄路管理局が所管する。

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