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15年ぶりに全線開通「阿里山林業鉄道」車両の中身 災害や資金難を乗り越え、再始動までの道のり

東洋経済オンライン / 2024年9月21日 7時0分

ところが2017年、阿里山鉄道は資金難により消滅の危機に直面する。赤字額は年間3億元(約11億円)と伝えられた。資金難の原因の1つは、1982年に開通した阿里山公路(道路)だった。

「知名度はあるのに稼げない」路線

阿里山公路は、嘉義から阿里山までを結ぶ約90kmの道路だ。阿里山鉄道よりも距離は長いが、台湾のモータリゼーション化とあいまって、1990年代以降、阿里山観光の主要な交通手段となった。対照的に、阿里山鉄道は「知名度はあるのに稼げない」路線になってしまった。

台湾政府は、林務局と台湾鉄路管理局に阿里山鉄道を共同運営させることで難局を乗り切ろうとしたが、林務局も台湾鉄路管理局も阿里山鉄道を引き受けたがらなかった。収益が見込めなかったためだ。

この時期台湾メディアは「阿里山鉄道、資金難により年内に運行停止か?」と伝えている。結局、最高行政機関である行政院での審議を経て、林務局が単独運営する形で決着した。

この審議の結果、阿里山森林鉄道は「阿里山林業鉄道」に名称変更されることになる。2018年7月、林務局に阿里山林業鉄路及文化資産管理処が発足し、現在に至っている。

「お荷物」だった阿里山鉄道の復旧に、政府は23億台湾元(約113億860万円)を支出している。そこまでしてこの路線を復旧させたのはなぜなのか。それは、「台湾の南北格差解消」に向けた起死回生の策だったからだ。

阿里山鉄道のある嘉義県は台湾の南部に位置する。北部と比べて経済発展が遅れており、可処分所得額が低い。2009年の嘉義県の世帯あたりの可処分所得額は、統計データのある23県市中22位。2022年は20県市中20位、つまり最下位だ。

発展が遅れる南部を、阿里山鉄道という観光コンテンツで発展させる。災害や時代の変化という困難を乗り越え復旧作業が続けられたのは、阿里山鉄道の復活でもたらされる経済発展が期待されたためだ。

救世主になるか?2つの高級観光列車

台湾政府の力の入れようは、今年投入された列車からも見てとれる。

5月24日に観光列車、栩悦號(シューユエハオ/Vivid Express)の運行を開始した。古い車両を観光仕様に改造したもので、阿里山に生息する鳥アリサンヒタキをモチーフにしたデザインとなっている。

栩悦號ではすべての車両に専属のガイドがつく。筆者が乗車した車両のガイドは、元高校教師の鐘祥(ショウ・ショウ)さんだ。鐘祥さんは大手旅行会社ライオントラベルの契約ガイドだ。同社は入札によって栩悦號の今後6年間の運営権を勝ち取っている。

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