「アメリカだけに頼れない」韓国で広がる核武装論 日韓同時の核武装を訴える書籍が日本でも出版
東洋経済オンライン / 2024年9月21日 9時0分
韓国で独自の核武装論が広がっている背景には、現在の尹政権が強化しているにもかかわらず、アメリカの「核の傘」を信頼できないという韓国の感情が表出している。米韓同盟を信じながらも、一方でアメリカの態度に不信感を拭えない――。そんな韓国人の気持ちが垣間見えるのだ。
例えば、本書でも触れられているが、朝鮮半島で有事が発生し、同盟関係にある韓国を防衛しようとアメリカ軍が出動した場合、北朝鮮がアメリカに対し「ワシントンやロサンゼルスをICBMで攻撃する」としたら、アメリカはそれでも朝鮮半島で韓国を守ることができるのかという疑問が代表的な不信感の理由だ。自国が攻撃されようとしているのに、それでも韓国という他国をアメリカは守ってくれるのか、ということだ。
「抑止力は十分」反論も
ただ、そのような不信感はあまりにも現実離れしているとの主張も韓国では根強い。
例えば、鄭成長氏の著書とほぼ同時期に日本で翻訳出版された『金正恩の「決断」を読み解く』(彩流社)の著者である鄭旭湜(チョン・ウクシク)氏がその代表的な論者だ。韓国では著名な平和活動家であり、『ハンギョレ』平和研究所所長の鄭旭湜氏は、韓国では「核インフレーション」、すなわち北朝鮮による核の脅威があまりにも誇張されている、と指摘する。
これには、次のような主張が韓国にある、と紹介する。
〈核を持った北朝鮮が朝鮮半島の共産化を行うだろうという主張は以前にもあり、今後も継続して出てくるだろう。このような主張の論理構造は(…)第1段階で北朝鮮は破壊力が低い戦術核兵器を動員して韓国に奇襲攻撃を仕掛けたり圧迫する。第2段階として、北朝鮮が戦略核兵器であるICBMで米国の大都市を攻撃すると脅し、米国の介入を遮断する。第3段階は、北朝鮮が韓国軍と在韓米軍の主要基地に攻撃を加え、韓米連合戦力を無力化し、特殊部隊を投入して韓国の主要施設を掌握する。最後に北朝鮮が地上軍を投入して朝鮮半島の武力統一を完成させる。〉(120ページ)
この主張のように、アメリカの介入が北朝鮮が狙うICBMに遮断され、韓国を守らないのではないかと恐れる人が韓国では少なくはないということだが、鄭旭湜氏はこのようなシナリオには「致命的な欠陥がある」と指摘する。それは、米韓同盟は北朝鮮の核の脅しには強力な報復能力とそれを使う意思を必ず示す、というものだ。
米韓同盟は北朝鮮に対し十分な報復能力を保有しており、その使用を何回も北朝鮮に表明してきている。したがって、前出のシナリオの第1段階はすでに破綻しているという。
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