「アメリカだけに頼れない」韓国で広がる核武装論 日韓同時の核武装を訴える書籍が日本でも出版
東洋経済オンライン / 2024年9月21日 9時0分
また、第2段階の内容にも反論を行っている。すなわちアメリカは約4万の核兵器を保有していたソ連を相手にしながらも、同盟国を保護する核の傘を広げてきた。当時のロシアや中国と比べても弱小国である北朝鮮の脅威に対して、同盟国である韓国の防衛を放棄することは杞憂なのだと。
さらに韓国には在韓米軍を含めて10万人超のアメリカ人が居住しており、北朝鮮がアメリカ本土に向かって核の脅威を向けてくれば、使用可能なすべての手段を動員して報復すると警告するのは確実だと鄭旭湜氏は断言する。
鄭旭湜氏は逆に、「アメリカの圧倒的な報復という脅威を前にした北朝鮮はどのような選択をするだろうかを考えてみたほうがいい」と言う。それは、アメリカが報復できないという一抹の希望にすがって自身の核兵器を使用するかどうか。
それは「10発の拳銃に9発を残して行うロシアンルーレットと同じ」ことだと一笑に付す。北朝鮮の指導者はそこまで愚かではない、ということだ。
日本以上の軍事力を持つ韓国
さらに、決定的な理由があると、鄭旭湜氏は紹介する。アメリカは世界戦略の中心に同盟を置き、その同盟は信頼に基づいている。となれば、アメリカが北朝鮮の脅威に屈服したとなれば、その信頼が根底から崩れることを意味している、と解説する。
これまでアメリカが力を傾けて推進してきたMD(ミサイル防衛システム)は、北朝鮮の脅威を口実にして推進されたものなのに、いざとなってMDを使わないまま北朝鮮に屈服することがあれば、アメリカの世界戦略、世界覇権戦略が台無しになってしまうことに気づくべきだという。
鄭旭湜氏の主張は、韓国軍はすでに日本の自衛隊を抑えて世界6位の軍事力を保有するに至っていることは、すでに十分に北朝鮮に対する抑止力が朝鮮半島にはあるということだと示す。
一方、核武装を唱える前出の鄭成長氏は「第6位の軍事力を持つのに、それだけでは北朝鮮の核を防げない」という認識だ。
日本はどうする?
世論調査での支持があっても、実際に韓国が独自の核武装に踏み切るかは未知数だ。韓国でこのような議論が出ている中でも、北朝鮮はますます自国の核武力の充実を止めない。
日本ではこれまで間欠泉のように核武装論が出てきたことがあった。核共有(シェアリング)についても、安倍晋三、菅義偉政権時に出たが、日本では非現実的な議論だと政界では結論づけられたようだ。
日本はアメリカとの軍事分野での同盟を強化する一方だが、その脅威の根源とする北朝鮮と相対しようとはしない。日本とアメリカに新しい指導者が登場しようとする中、東アジアの安全保障は緊張状態を続けている。
福田 恵介:東洋経済 解説部コラムニスト
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