建設業で若者が職人になりたがらない根本原因 仕事量で給与が変動する不安定な給与形態
東洋経済オンライン / 2024年9月21日 8時0分
民間工事でも施工能力不足は顕在化している。ちょうど1年前に掲載した「大阪万博『工事遅れ』背景に施工能力不足の深刻」(2023/09/07)では、関西4府県の建築着工床面積(住宅除く)が年間約700haであるところに、会場面積155haの大阪・関西万博の工事が発注された事実を指摘。人手不足でフル操業状態が続くなか相当な負荷がかかったことが海外パビリオンなどの工事遅れにつながったのは間違いない。
この記事では、地震などの大災害が発生したときに施工能力不足によって復旧・復興が進まないことにも警鐘を鳴らした。不幸にも、その4カ月後に能登半島地震が発生し、半島という地理的な条件もあって多くの被災建物は撤去されずに放置された状況が続いている。今年8月には初めて巨大地震注意が発表された南海トラフ地震では東日本大震災の約20倍となる約238万6000棟の建物被害(全壊)が想定されており、その対策も真剣に考える必要がある。
建設生産システムは、土木は主に機械化で、建築はプレハブ化によって生産効率の向上が図られてきた。しかし、敷地に合わせて用途ごとの建設構造物を構築するにはどうしても人手が必要となる。とくに建築の内装や設備などの工事はほぼ人手で行われており、躯体部分をいくらプレハブ化しても、それ以外の工事には技能労働者が欠かせない。
「いま、最も足りていないのは造作大工(内装工)だ。これまでは期末の3月、9月に工事が集中していたが、今年度からは工事量の平準化を本格的に進めている」
賃貸住宅建設最大手の大東建託が7月27日に東京ビッグサイトで開催した技能競技大会「匠マイスター技能選手権」の会場で、同社の工事発注担当者から人手不足の実情を聞いた。
同大会には、関東地区の協力会社で技能の高い職人たち約50人が出場し、仮設で作った賃貸住宅のモックアップに断熱材を入れ、石膏ボードを張るなどの内装工事を行う大工と、配線とコンセントの設置などの電気工事を行う電工、水道の配管工事を行う設備工の3人がチームを組んで技能を競う。休み時間などに手あたり次第に参加者に新規職人の採用状況を尋ねて回ったが、「いまどき職人になろうなんて若者はいないよ」との声ばかりだった。
建設業界が抱える最大の課題
建設業界が抱える最大の課題は「月給制」の実現であると筆者は考えている。そのことは約10年前の記事「職人軽視の日本人が、建設業をダメにする」でも書いた。
この記事に関連するニュース
-
建設業の深刻すぎる「人手不足」解消に必要なこと 一括請負方式の生産システムを見直せるか
東洋経済オンライン / 2024年9月22日 7時0分
-
「The職人」ベテランに聞く!建設現場で起きていること、これから起きること
マイナビニュース / 2024年9月20日 10時0分
-
メディアから見た建設産業の近未来像とは
マイナビニュース / 2024年9月19日 10時0分
-
日本の建設産業、これまでとこれから
マイナビニュース / 2024年9月18日 10時0分
-
高齢化進む建設業界で二重三重のひずみ浮き彫り…69歳測量士が安全確保怠った建設会社を提訴
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年9月14日 9時26分
ランキング
-
1ソフトバンク、「医療AIに猛進」の知られざる内幕 孫社長が事業立ち上げを託したキーマンに直撃
東洋経済オンライン / 2024年9月27日 8時0分
-
2年金「月14万円」…手取り30万円労働者の「残酷すぎる老後」
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年9月24日 18時30分
-
3任天堂も激怒「酷似ゲーム」会社が犯した痛恨失態 特許権侵害で訴訟され…出した"声明"にツッコミが殺到
東洋経済オンライン / 2024年9月25日 18時30分
-
4豊田章男会長の「信任率急落」の衝撃…トヨタ業績絶好調でも株主の3割がノーを突きつけた本当の理由
プレジデントオンライン / 2024年9月27日 10時15分
-
5国内最大手「真っ赤なヒゲ親父」のオートバイ販売店 米投資ファンド買収で今後の経営は大丈夫か?
乗りものニュース / 2024年9月27日 9時42分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください