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最終週「虎に翼」異例ヒットとなった"2つの理由" 新鮮でありながら「NHKらしい」見事なドラマだった

東洋経済オンライン / 2024年9月23日 10時30分

半年間にわたり、主人公・寅子を好演した伊藤沙莉(画像:NHK『虎に翼』公式サイトより)

正しさとはなにか。

【写真】『虎に翼』を大ヒットに導いた「脚本家・吉田恵里香氏」はこんな人

朝ドラこと連続テレビ小説『虎に翼』(NHK、脚本:吉田恵里香)の最終週の1週前、主人公・寅子(伊藤沙莉)が、反論したことを詫びる若い調査官・音羽(円井わん)に「すべて正しくなければ声をあげてはいけないの?」と自分にはなんでも言っていいという懐の大きさを見せた。

これは『虎に翼』の中では珍しいことではない。『虎に翼』ではこの半年間、一貫して、正しくなくてもいい、完璧じゃなくてもいいということを描き続けてきた。

あくまで基準は「自分」

寅子は友人のよね(土居志央梨)に「よねさんはそのまま嫌な感じでいいから」と言っている。そのせいか、よねはいい大人(50代)になっても口が悪く、愛想もない。そもそも、ずっと男装をしている。

男尊女卑の時代、男のような口ぶりかつ男装をしていたせいで司法試験に受からなかったのではないかと思われても、決して自分を曲げることなく、やがて男装のまま司法試験に受かった。自分らしく生きた末の勝利である。

寅子自身が、判事のわりに正しくも完璧でもなく、ちょっと嫌な感じのキャラである。常に誰かの言ったことに「はて?」と口を挟みまくる。

中でも、恩師・穂高(小林薫)に花束を手渡さなかった事件は、多くの視聴者が「はて?」と釈然としない思いにかられた、世の大絶賛を浴びている『虎に翼』のなかで最大の謎であった。

寅子の武勇伝・穂高事件は自分らしさを語るうえで重要である。

詳しく記すと、寅子が妊娠と仕事を両立させようと奮闘していたとき、穂高がいったん子育てに専念したほうがいいと助言。それが寅子を激怒させ、穂高が引退するときまで根に持っていて、彼の送別会で花束を渡す役割を拒否したのである。「納得いかない花束は渡さない」という捨て台詞を吐いて。

寅子の言い分としては、仕事を選ぼうと子育てを選ぼうと、どちらを選ぶにしても自分が選択したく、たとえ善意であっても、他者から寅子をさも理解したふうにこうするといいとは言われたくない。

世にいう「傾聴」の大切さを説いたエピソードであり、相談の趣旨とは当人の言いたいことを聞いてもらうことであり、他者の意見を求めていないという、コミュニケーションにおいてつまずきやすい問題を描いた。

寅子の生きる道、それは世間一般の正しさを基準にしないこと。あくまで基準は自分。思ったことは遠慮なく声に出す。

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