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最終週「虎に翼」異例ヒットとなった"2つの理由" 新鮮でありながら「NHKらしい」見事なドラマだった

東洋経済オンライン / 2024年9月23日 10時30分

だから、娘・優未(川床明日香)が大学院まで進んだにもかかわらず途中で辞めて、自分探し(雀荘や甘味と寿司の店でバイト)をはじめたことを内心心配しながらも、決して、寅子の意見を押し付けず、じっと黙っているのである。

寅子は、ここまで来たのだから卒業したほうがという夫・航一(岡田将生)の発言を「黙って!」と遮り、「優未の道を、閉ざそうとしないで」「どの道を、どの地獄を進むかあきらめるかは、優未の自由です」と主張する。

航一の意見を「黙って」と封じるのはありなのか、とこれもまた「はて?」ではあるが、寅子の信条は「すべて正しくなければ声をあげてはいけないの?」だと言われたら、ぐうの音も出ない。

主人公はなかなか肝が据わっている

「黙って」と言われてしまった航一をはじめとして、基本的に、男性陣は、寅子たち女性から身体的にも言葉的にも暴力にさらされる。

暴力はよくないという台詞もあるが、股間を蹴ったり、危険な崖のほうへ小突いたり、キックしたり(これは女性から女性へ、だった)、ときに手が出る、口が出る。

それでも寅子は、「すべて正しくなければ声をあげてはいけないの?」や「そのまま嫌な感じでいいから」という精神で突き進むのだ。なかなか得がたいキャラクターである。「許さず恨む権利がある」なんてセリフもあった(左遷させられた若き判事の思いの代弁)。

朝ドラに限ったことではないが、物語の主要な人物はたいてい、理にかなっている。世間一般において正しいことを発言し、行い、共感され、支持される。

だが、寅子は違う。弁護士の仕事を得るために契約結婚をしたり、子どもができても子育てに熱心でなく、晩ごはんの代わりにお菓子で済ませたり、職場でキスしたり、再婚の際は事実婚を貫き夫婦別姓を選択したり。世間的に見ていかがなものかと思う視聴者もいる一方で、そういう狡さやゆるさに救われる視聴者もいるのである。

なにごとも「ゆるし」が大事とはいうものの、それは理想論に過ぎず、「許さず恨む権利がある」という主人公はなかなか肝が据わっている。

「はて?」のたびに、実社会での問題が浮かび上がる

契約結婚は、「逃げ恥」(ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』)ブームの影響もあってか、令和のいま浸透しているし、夫婦別姓も目下、議論されている注目案件である。子育ても家事も、やってくれる人にやってもらうサービスがビジネスとして成り立っている。

これまでいかがなものかと思われたことが、いや、やってみてもいいのではないか、やってみたら意外といけると、新たな門戸はどんどん開いているのが令和である。

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