「稼げるハイブリッド車」が握るホンダの未来 脱「低収益の4輪事業」でEV離陸までの橋渡し
東洋経済オンライン / 2024年9月24日 8時0分
ただ、「e:HEVでは、モーター走行とエンジン走行の切り替え時に走行への違和感が生じないように徹底的にこだわった」(安積氏)ことで、走行時の快適性が格段に改善。さらに速度に合わせてモーターとエンジンを効率的に使い分けることで、新型フリードHVの燃費は先代のHVモデルより2割向上しており、市場で人気を博している。
e:HEVは採算面でも優等生
ホンダにとってe:HEVは第3世代のHVシステムに当たる(世代の定義によって異なる)。実は、ホンダは日本を除いたグローバル市場で2代目までのHVモデルは積極的に投入してこなかった。というのも、「コスト改善ができていなかったので、HV比率が高まると採算が大変なことになる」(藤村CFO)ためだった。
HVはエンジンに加えて電池やモーター、インバーターを搭載するため、エンジン車よりもコストが高い。だが、e:HEVは素材の見直しや構造の改善によってシステムコストを25%低減することに成功した。三部敏宏社長は、「HVはガソリン車と同等の利益を生み出せるようになっている」と強調する。
HVが採算面でも優等生となったことで、ホンダの経営課題の1つが改善しつつある。
ホンダは年間販売台数が300万台規模だった2010年代前半、「世界600万台体制」を目標に掲げ、派生車種をグローバルで多数展開した。だが、思ったように販売台数は伸びず、開発コストなどが重荷となって4輪事業の営業利益率は1~2%が常態化してしまった。
半導体不足などで生産数量が減った2023年3月期には4輪事業が営業赤字に転落。収益面では完全に「2輪におんぶに抱っこの状況」(ホンダ系部品メーカー首脳)となってしまった。
この苦しい時期に投入されたのがe:HEVだ。コスト改善によって北米などでもHVモデルを次々と投入できるようになった。市場でHVの人気に火がつき、半導体不足の解消で増産が可能になったことも重なり、足元ではHVモデルが5割を占める車種も出てきた。
結果、4輪事業の営業利益率は2024年3月期に4.1%、さらに2024年4~6月期には6.4%へと急浮上している。「HVを含むエンジン車の営業利益率は8%レベルまできている」と藤村CFOは手応えを語る。
課題山積みのEV
一方、新たな課題も出てきた。
2040年に脱エンジンを掲げるホンダ。将来的なEVシフトへの前向きな姿勢は日本メーカーでも群を抜く。だが、皮肉なことにEVでは日本勢の中でもほとんど存在感を示せていない。
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