「稼げるハイブリッド車」が握るホンダの未来 脱「低収益の4輪事業」でEV離陸までの橋渡し
東洋経済オンライン / 2024年9月24日 8時0分
ホンダにとって初の量産型EVである「ホンダe」は目標販売台数に遠く及ばないまま2024年1月に生産を終了。ゼネラル・モーターズ(GM)と共同開発するはずだった量販価格帯の中小型EVについては、商品性や価格を含めた製品の着地点が見いだせずに計画は白紙になった。
中国で投入したEVシリーズは中国勢に太刀打ちできず、鳴かず飛ばずの状況が続く。あるホンダ系部品メーカーの首脳は「HVを含めたエンジン車が売れるのはいいが、今後の主力としているEVが本当に売れるのかが重要だ」と不安げに語る。
電池のコストが重いEVで利益を出せているのはテスラや中国・BYDといったごく一部に限られる。そもそもホンダの場合、開発費をかけたEVが売れてもいない。HVを含むエンジン車で8%台と実際の営業利益率の差はEVのマイナスが大きく影響していると見ていい。
「EVは2020年代後半が勝負になる」。ホンダ経営陣はEVの販売競争はこれから佳境になると繰り返している。
その勝負どころに向けて、車体技術の新工法「メガキャスト」の導入、全固体電池やEV専用のソフトウェア基盤の開発を進めている。2026年以降には「ホンダ0(ゼロ)」シリーズなど新技術を採用するモデルが立ち上がってくる。ゼロシリーズでは商流の見直しも含めて電池の調達コスト20%削減、自動化や部品集約で生産コストを35%削減(ともに現状比)することを目指している。
日産自動車、三菱自動車とEVやソフトウェア領域の協業検討も始まっている。それらも含めて、ホンダはEV事業立ち上げに2021年から2030年までの10年間に10兆円を投じる。巨額投資を行いながらも、コスト削減と台数拡大を進めることで2030年までにEV事業の営業利益率を5%まで高めるというのが、ホンダが中長期で描く戦略だ。
逆に言えば、EV戦略が順調に進んだとしてもHVとエンジン車の利益率を下回る状態が続く。つまり、4輪事業全体の収益性の足を引っ張ることになる。
HVが全体の5割、エンジン車より儲かるように
だからこそ、HVの業績貢献への使命は重い。
三部社長は「このままいけば2030年ごろには(HV販売が)180万台まで伸びる可能性がある」と自信を示す。180万台となれば、ホンダの4輪販売台数で約5割をHVが占めることになる。
e:HEVについては、さらなる小型化とコスト削減を図っていく考えだ。そのうえ台数も増えれば、HVがエンジン車よりも儲かる状態となる可能性が高い。
ホンダが初めてHVを投入したのは1999年の「インサイト」。プリウスを大ヒットさせたトヨタと共にHV技術を磨き上げてきた。それから四半世紀、ようやく輝きを見せ始めた虎の子が脱エンジンを掲げる2040年までのホンダの命運を左右することになる。
横山 隼也 :東洋経済 記者
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