少年事件と向き合う「虎に翼」寅子モデルの信念 シンナーやボンド遊び等非行が横行するように
東洋経済オンライン / 2024年9月25日 10時30分
NHKの連続テレビ小説『虎に翼』が放送以来、好調をキープし、まもなく最終回を迎える。毎朝の放送のたびに、SNSでも大きな話題となっているようだ。主人公・佐田寅子(ともこ)のモデルとなっているのが、女性初の弁護士で、女性初の裁判所長となった三淵嘉子(みぶち・よしこ)である。実際にはどんな人物だったのか。解説を行っていきたい。
アメリカを参考に設置した「家庭裁判所」
「アメリカには、ファミリー・コートと呼ばれる裁判所があるらしい」
【写真】5000を超える非行少年・少女と向き合った三淵嘉子。写真は旧・奈良監獄
昭和23(1948)年、三淵嘉子が弁護士から裁判官に転身しようとしていた時期に、最高裁民事局の会議でそんな話題が出たと、嘉子はのちに回想している。
アメリカの「ファミリー・コート」では、家事部と少年部が連携しながら、家庭に関する問題を引き受けるのだという。
日本でも家庭裁判所を作るべきではないか。そんな議論のなかで、すでに少年事件の審判や保護を行う「少年審判所」があったため、「いくつも裁判所があるのはまずい」という慎重な意見も出た。だが、少年審判所は終戦時で全国18カ所しかなく、十分な対応はできていないのが、実情だった。
最高裁民事局で議論した結果、「家庭裁判所の設置に賛成」で意見はまとまった。嘉子も賛成している。全国49カ所に家庭裁判所が作られたのは、その翌年の昭和24(1949)年1月1日のことだった。
立ち上げから携わってきた嘉子からすれば、家庭裁判所への思い入れは並々ならぬものだった。だが、嘉子は裁判官の赴任先として、家庭裁判所をあえて希望しなかった。
「先輩の私が家庭裁判所にいけばきっと次々と後輩の女性裁判官が家庭裁判所に送り込まれることになろう。女性裁判官の進路に女性用が作られては大変だ」
そんな理由から「50歳前後まで家庭裁判所の裁判官は引き受けない」と心に決めたという。
その決意どおりに、13年余りの地方裁判所の経験を経たのち、昭和38(1963)年4月から、48歳にして家庭裁判所へと異動。嘉子は「少年審判部九部」に所属することとなった。
少年事件の担当が当初は不安だったワケ
家庭裁判所で扱う事件は、大きく分けて2つある。1つは「家事事件」で、離婚や遺産相続をめぐるトラブルなど、家庭内の紛争だ。もう1つが、未成年者の非行や犯罪などの「少年事件」である。
嘉子はこれまで民事裁判でキャリアを積んできた。そのため、「家事審判」ではなく「少年審判」の担当になったことに、当初は不安を感じていたという。だが、家庭局時代の上司にあたる宇田川潤四郎からこんな激励を受けて、考えが少し変わったようだ。
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