「もう時代後れ」日本の株式会社が見失ったもの 優秀な社員たちの解放が必要な真っ当な理由
東洋経済オンライン / 2024年9月26日 14時0分
「このメールが遅れると嫌味を言われる。文章の長さも人事評価につながる」
(40ページより)
もはや、なにが「利他」なのかわからない状態で、むしろギャグといったほうが合いそうだ。
しかしこれは一例にすぎず、極めつきはこの会社にある「誉(ほまれ)休暇」である。営業成績がトップになると有給休暇を使う権利が与えられ、机の上に「誉給与」という厚紙でつくった三角錐が置かれるというのだ。
そもそも有給休暇を使う権利は、社員が持っているものではないだろうか。しかしここでは、基本的に病気などの理由以外で有給を申請することは禁止されているのだという。
あきれた「利他」のあり方だが、優秀な社員ほど定着しないようだ。当然のことながら、理不尽なルールに反発して辞めていってしまうためである。
この会社はほんの一例にすぎないが、日本にはこうした企業が決して少なくないのではないだろうか。
しかしその一方、そうした旧来的な価値観に縛られることなく、独自の路線を突き進んで成功している企業も出てきている。
本書の後半ではそれが例示されているのだが、そのひとつが千葉県の房総半島を横断する全長39キロメートルのローカル線である「小湊鐵道」だ。
夢物語が現実に
同社については、そのユニークな取り組みがマスコミで取り上げられることも多い。とにかく人の壁がなく、経営トップの石川晋平社長と従業員たちが仲間か同志のようにやり取りをしているのだ。
特徴的なのは、社長である石川氏が比較的若いにもかかわらず、60代、70代の社員が多いこと。それでいて20代、30代の若手も次々と入社してくるのだという。
石川氏の祖父である信太氏が2代前の社長で、その座を引き継いでおられるからだが、結果的にバランスがとれているわけだ。
現在も昔のままの駅舎が使われているのは、画家としても有名だった信太氏が駅を近代的に造り替えることを許さなかったからだ。
それが周囲の田畑や菜の花が咲く風景と溶け合い、多くの人を引きつける魅力となっているそうだ。
山間部の鉄道事業は赤字が続き、補修をすることも難しいが、里山の風景こそが最大の魅力。そこで祖父の意思を引き継いだ石川氏も、コストを抑えなから山間部を残そうと尽力している。
しかも、地元の住民たちがそれを支えているというのだから理想的なあり方である。
各駅で自称「勝手連」を結成し、無人駅を清掃し、草刈りをしているのだ。そればかりか、クリスマスシーズンには勝手に駅舎をイルミネーションでライトアップし、集客を促したりもする。
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