レバノンの通信機爆発はどう仕組まれたのか 現代の「トロイの木馬」はゲームチェンジャーだ
東洋経済オンライン / 2024年9月26日 9時30分
アメリカのABCテレビは20日、イスラエルがヒズボラを標的に爆発させたポケベル製造に関与しており、この種の「サプライチェーン阻止」作戦を少なくとも15年前から計画していたと報じた。
今日、ヒズボラのみならず、世界のあらゆる戦闘部隊は電子通信手段に依存しており、その結果、有能な敵がつけ込むことができる大きな脆弱性が生まれている。
自衛隊もヒズボラが経験したことから教訓を学ぶのが賢明だろう。なぜなら、将来の紛争で中国やロシア、北朝鮮といった潜在的な敵国が同じような作戦を実施しかねないからだ。
実際、アメリカ上院軍事委員会は2012年、1年間にわたる調査で、空軍のC-130J貨物機や特殊作戦ヘリコプターの組み立て部品、海軍のポセイドン偵察機に中国製の偽造電子部品が使われていることがわかったとする報告書を発表。こうした国家安全保障を脅かす偽造品の主な供給元は中国であると結論付けた。
また、2018年のブルームバーグの報道によると、アメリカ捜査当局は中国がコンピューターチップを改造して情報を盗んでいると非難した。
こうした攻撃や類似の攻撃から自国を守る方法はいまだ確立していない。すでにハイテクのサプライチェーンは複雑かつ国際的になっているからだ。
日本も他人事ではないサプライチェーン危機
ヒズボラもハンガリー企業から調達されてきていることに何の警戒心も抱いていなかった。なぜなら、そのような国際分業はまったく普通のことだからだ。日本で人気が高いアップル製のiPhoneもその1つだ。iPhoneの部品は数十カ国から輸入され、主に中国で組み立てられている。
標的はどこにでもある。とくにインターネット上やコンピューターは脆弱だ。車や冷蔵庫、冷暖房設備など私たちの周囲にある多くの物が遠隔操作のスマートリモコンでますます便利になる一方で、ネットワーク攻撃やサプライチェーン攻撃にさらされるリスクが高まっている。それは私たち自身が脆弱になっていることを意味する。
イスラエルのポケベル攻撃は世界を変えるゲームチェンジャーだ。日本も心して対策に取り組まねばなるまい。
高橋 浩祐:米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員
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