「奄美大島に移住」57歳の彼が進める"趣味の終活" ウミウシに魅了されて引っ越し、"終活"の背景
東洋経済オンライン / 2024年10月24日 11時30分
「当時は超円高で、国内で潜るより海外で潜ったほうが安かったので、サイパンへ潜りにいっていましたね。現地でライセンスを取り、水中の風景やハゼの撮影を始めました」
ウミウシの魅力に気づいたのは2000年ごろ。オールカラーで300種のウミウシが掲載された『ウミウシガイドブック』(小野篤司 著・TBSブリタニカ)を手に取ったのがきっかけだった。
「それまでウミウシは5種類しか知らなかったので、こんなにいるのかと。種類の多さとフォトジェニックなところに魅了されて、ウミウシ専門になりました」
仕事が忙しく趣味に没頭できない日々
長年、数々の趣味を楽しんできた今本さんは、ウミウシ撮影を「趣味の集大成」と表現する。
カメラやパソコンの知識は、「海の宝石」の魅力を最大限に引き出すのに役立った。カメラをウミウシ撮影用にアレンジする際、工作などで鍛えた創意工夫と手先の器用さが発揮された。「ムダのない趣味をしてきたなと自分でも思います」と今本さんは笑う。
撮影スポットは、普段は伊豆半島。夏は沖縄の海だった。しかし、SEの仕事がかなり忙しく、伊豆にもそう頻繁には行けなかったという。
「伊豆にダイビングに行くだけでもガソリン代やタンクレンタル代、施設使用料などでお金がかかりますし、帰りは国道135号の大渋滞に巻き込まれて疲れてしまう。日曜日に行くと翌日仕事になりませんから、土曜日しか行けなかったですね」
奄美大島を初めて訪れたのは2003年3月。夫婦で沖縄へのウミウシ撮影旅行を計画していたが、仕事が忙しくて手配が遅れた。代わりに向かったのが奄美大島だった。
待っていたのは「ウミウシ天国」だった。短期間で初めて出会う種や珍しい種、南方種のウミウシにたくさん出会えた。海はほぼ貸し切りで、伊豆のように大勢のダイビング客もいない。
のどかな島の雰囲気も気に入り、5月と7月にも奄美を再訪。ますます島の魅力に取りつかれ、移住を考えるようになったという。
「勤めていた会社は激務でしたが、給料は悪くなかった。共働きで子どもがいませんでしたから、当時はある程度の蓄えもありました。だから、仕事を決めないまま移住できたんだと思います。不安がなかったわけではありませんが、仕事が見つからなければまた小田原に戻って関東の会社で働けばいいかなと。行かないで後悔するのは嫌だったんです」
引っ越した矢先に痛風、まさかの出会い
2003年11月、奄美移住を決めた今本さん夫婦は車で鹿児島へ向けて出発した。各地のウミウシを撮影しながら移動し、滞在先では晩酌を楽しんだ。鹿児島からはフェリーに乗り、ようやく奄美大島に辿り着く。ところが、引っ越し作業が終わって仕事を探そうとした矢先、足に激痛が走った。痛風だった。
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