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余命1年で入院「病院食」のレベルの高さに驚いた 限られた予算で豊富なメニューをそろえる創意工夫

東洋経済オンライン / 2024年11月23日 9時40分

食事内容は病院の栄養士さんがメニューを決めているとのこと。病院内の廊下に1週間の献立表が置いてある。1日のエネルギー1600キロカロリーを維持しながら、患者を飽きさせないように和洋中、それぞれの食材と調理法をひねり出している。大変な仕事だと思う。

ともすれば「病院食は味が薄い」「物足りない」と文句を言いがちだが、そんなことは口が裂けても言ってはいけない。配膳された食事を感謝の気持ちで食べるべし。

病院でまさか騒音に悩まされるとは

夜、血液検査の結果が出て、ヘモグロビンの値が低いので、再び200ccの輸血を行う。2時間かけてゆっくりと点滴で入れていく。自分以外の血が体内に入っていくのを見ているのは何とも不思議な気分だ。学生時代はよく献血していたものだが、こうしてお世話になる日が来るとは思わなかった。

そうこうしているうちに気がついたのだが、病院というのは本当にうるさいところだ。病室がナースセンターに近いせいもあるのだろうが、四六時中音が鳴っている。ナースコール、機械の操作音、点滴の終了を示すアラーム、そして病室の老人たちが発する奇声や、豪快ないびき、歯ぎしり……。無音の世界が恋しくなってくる。

そんな入院生活に遊び心を取り入れようと、自宅からコーヒーの粉とキャンプ用のシエラカップを2つ、コーヒーフィルター、ドリッパーを持ってきた。共用ルームの給湯施設でお湯をポットに入れてきて、部屋で淹れたてのコーヒーを楽しむのだ。これはいい気分転換になった。さながら“病室キャンプ”だ。病室を訪れる看護師さんたちにも「いい香り」と好評だった。

がんとの共存には、こんな小さな遊び心も必要だ。毎日毎日、余命1年とか、終活だとか考えていたら気が変になりそうだ。生存期間がある程度決まってしまっているとしても、その間、自分が納得のいくような生き方をすればいいだけの話。幸い、“人造人間”にはなったものの体は平気で動く。寝たきりではない。ちょっとした旅行や取材はこなすことができそうだ。

この1週間は病院で安静にして体力を蓄え、退院したら井の頭公園の周辺から玉川上水の辺りをのんびりと散策しよう。そのうちもう少し体力が回復すれば、扇山や大菩薩ぐらいは登ることができるかもしれない。今は、そのための準備期間だと考えることにしよう。

病院食について

病院食は法律と「入院時食事療養費制度」によって、1食当たりの予算が決まっている。現在は1食当たり670円で患者負担は90円(一般所得者)。保険給付が180円となっている。1日当たりでは2010円となる。

ある大学病院では患者の状態にフィットした形で提供できるように一般食、治療食あわせて約200種類の食事基準を設けているという。筆者が入院した病院では、最初、朝食がパンだったが、途中からおかゆに変更してもらった。この辺りの融通は利く。

家庭ではなかなか味わえないメニュー

メニューで関心したのは、魚類の料理が充実していることだった。例えば10月、11月のメニューを見ても鮭南部揚げ、サバ塩焼き、アジフライ、かれいムニエル、目鯛塩焼き、カジキソテー、鮭フライ、ムツ照り焼き、アコウダイ塩焼き、さわら照り焼きなどなど。これだけのメニューは家庭ではなかなか味わえない。しかもヘルシーである。

栄養士さんに仕入れの大変さを聞いたところ、「最近は魚だけでなく、あらゆるものが値上がりして困っています」とのことだった。病院食の舞台裏にもドラマがある。

山田 稔:ジャーナリスト

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