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「ノウハウを欲しがる病」で可能性が潰されている 成功や失敗という概念はそもそも「空虚」だ

東洋経済オンライン / 2024年11月23日 18時0分

失敗を恐れるあまり、独自の人生を歩む可能性をつぶしていないでしょうか(写真:hidez/PIXTA)

哲学というと難解な専門書を読み解く必要がありそうで、つい身構えてしまう人もいるでしょう。しかし、ベルリン自由大学で哲学を学んだ作家の白取春彦さんは、哲学の個々のユニークな考え方を知ることによって、自分の考え方や価値観にこれまで気づかなかった新しい視点と発見を与えてくれる、といいます。人生を勝ち組、負け組、成功/失敗と捉えることはよくありますが、失敗を恐れるあまり、それに固着して、独自の人生を歩む可能性をつぶしていないでしょうか。

白取さんの新刊『ひと口かじっただけでも 哲学は人生のクスリになる』から、現状を変え、人生の突破口を見出す考え方を一部引用・再編集してご紹介します。

成功しなければならない、ですか?

この物事はこういうものであるからこういうふうな取り扱いをしなければならないと信じ、少しも疑わなくなってしまうのが固着観念だ。一般的には固定観念ともいう。わたしたちは無数の固着観念を抱き、その観念を参照しながら日々を生きている。

現代に働く人が抱えている固着観念の大きなものは、何事も成功か失敗かで価値づけられるというものだ。

一個の人間が有能か無能かもこの成功/失敗スケールで測られる。この固着観念は学校で身につけさせられ、学校を出てもずっとまとわりついてくるものだ。企業ももちろん、この固着観念で染まっている。書類もこのスケールでの判断が記載され、それはほぼ烙印(らくいん)のようなものだ。

成功/失敗にこだわったのは、「神の予定によって救われるべき人は必ず自分の職業が神から召(め)された天職だと確信されていなければならない、その職業において成功し、豊かになっていなければならない」と説いたドイツの神学者マルティン・ルターや、「信者が神によって救われているかどうかはその人の仕事の成功の有無ではかられる」としたフランスの神学者ジャン・カルヴァンだ。

その教えは宗教の要素として広まり、清教徒がアメリカに渡ったためアメリカで広まり、そのアメリカに戦争で惨敗(ざんぱい)した日本がアメリカ化されたために成功/失敗スケールを盲目的に取り入れて軽率(けいそつ)にも自分たちの倫理としてしまい、今では内容の貧弱なビジネス本やコンサル本が従業員の教科書と化して成功/失敗スケールを蔓延(まんえん)させている。

固着観念=固定観念とは空疎なもの

ところが、成功や失敗という概念は最初から内容が空虚なものだ。誰かが行った行為が成功であったのか失敗であったのか判断することは不可能だからだ。

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