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うつで働けなくなり知った「ボードゲームの魅力」 ボードゲームは個人の属性も能力差も乗り越える

東洋経済オンライン / 2024年11月23日 14時0分

與那覇 確かに。もし相手が「博士号を持つ歴史学の専門家です。私に言わせると、このゲームは史実に忠実ではなく間違っています」とか名乗ってきたら、あまり楽しく遊べない気がしますね(苦笑)。

小野 純粋にゲームだけを楽しむためには、「自分は何者か」「普段どういうキャラか」みたいなことを一回忘れた方がいいので、あえて自己紹介はしない。別にルールとして設けていなくても、大都市のお店のゲーム会などでは、自ずとそういうマナーが生まれることもあるようです。名前をいちいち名乗らず、「緑のコマの方」のように呼びあうとか。

與那覇 2022年に刊行した『過剰可視化社会』(PHP新書)で使った用語でいうと、「逆カミングアウト」になりますね。自分が持っている属性──たとえば会社や大学の名前、家族構成といったものを名乗らずに、一切伏せる。それでも居合わせた他者からケアしてもらえることで、人は「俺は俺でいるだけでいいんだ。属性を失ったから無価値だなんてことは、ないんだ」と実感できるようになる。

重要なポイントは、まさにボードゲームと同じく、逆カミングアウトの効果は「対面」でないと十分に発揮できないことです。

小野 確かにSNSなどのオンラインでは、むしろプロフィール欄に自分の属性を全部書く「カミングアウト」の方が盛んですね。それを目印にして、似た属性の人どうしでつながりたいという欲求がある。もちろん「趣味:ボードゲーム」と書いておくからこそ見つけてもらえて、ネットで知りあったメンバーでゲーム会ができるといったよさもありますが。

與那覇 ええ。そうしたメリットは前提とした上でですが、コロナ禍でのオンラインへの依存もあって、ぼくはむしろ「過剰カミングアウト社会」の副作用の方が気になっているんです。

SNSで自分は「うつ」だとカミングアウトすれば、対面なしでもうつの知りあいを増やせるかもしれない。でも、うつの症状や程度って本来、人それぞれでしょう? ところがオンラインだとつい用語が独り歩きして、「うつの人はすべてこうだ・こうあるべき」といった、本人の顔を見ないままでのおかしな相場観が作られがちです。

結果として、外食の写真をアップした人が「うつなら、家で寝ていた方が」のように言われたり、逆に当事者を勝手に代弁して「今の発言はうつ差別です。みなさん叩きましょう!」と煽る人が出てきたり。近日顕著なのはLGBTの問題で、日本では注目が広がる時期がコロナ禍と重なったために、同じ構図でこじれてしまった印象があります。

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