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プロ作家が取材で実践「本を書くための」ノート術 取材では「ICレコーダー」あえて使わず手書き派

東洋経済オンライン / 2024年11月23日 16時0分

著者の石井光太さんは「警察官や官僚は、自分の発言が録音されることをとても嫌がるものの、手書きのメモに関しては認める場合が多い」と言います(写真:mapo/PIXTA)

事件ルポから教育問題まで、独自の視点で社会に切り込んできたノンフィクション作家・石井光太さん。石井さんの新著『本を書く技術 取材・構成・表現』では、自身の取材・執筆の方法論を初めて明かしています。

取材時のノート術や文章表現のコツ、文章構成の基本などを同書から抜粋し3回にわたってお届けします。

手書きの4つのメリット

取材における記録の取り方は多様だと断った上で、ここから先は私がどのような方法で記録を取っているかを紹介したい。

【画像】取材ノートはこんな感じ

私が主な記録手段としているのは、大学ノートへの手書きだ。道具は、たくさん書ける罫幅の狭い厚めのノートに、ドクターグリップのシャープペンシルだ。

インタビューの間、私は大学ノートを広げて、猛烈な勢いで書いて書いて書きまくっている。ICレコーダーによる録音については、リスク管理の必要な取材に関しては実施しているが、そうでない場合は大学ノートへの手書きの記録だけにするようにしている。ICレコーダーを併用する場合と、メモだけで行う場合は、半々くらいだろうか。

手書きの記録を重視する理由は、大きく4つある。

1 相手に不必要な警戒心を抱かせないため。
2 発言の言葉尻に振り回されないため。
3 脳をフル回転させて情報を精査するため。
4 ノートによって相手の頭も活性化させるため。

1から見ていこう。

ICレコーダーは、メモに比べて、相手にはるかに大きな警戒心を抱かせてしまう。

書き手がメモを取っていれば、相手は多少言いすぎたとしても、「この人なら、自分の発言を和らげてくれるだろう」と思うものだが、ICレコーダーの録音ランプが目の前で光っていれば、一言一句すべて冷徹に記録されて掲載されるような不安に陥るので、無意識のうちに「どこまで話していいのだろう」という気持ちになり、会話の内容や表現を抑える。これによって重要な情報が得られなくなることがままあるのだ。

ICレコーダーとメモが与える心証の差は大きい

ちなみに、警察官や官僚は、自分の発言が録音されることをとても嫌がるものの、手書きのメモに関しては認める場合が多い。録音は自分の立場を危うくする証拠となるが、メモはそうではないという意識があるのだろう。それぐらいICレコーダーとメモが与える心証の差は大きいのである。

2は、取材の内容を活字化するために有効なことだ。

インタビューの時、相手は非常に回りくどい言い方をしたり、不用意に過激な表現をしたり、意見をコロコロと変えたりすることがある。書き手は、言葉尻に振り回されてそのまま書くのではなく、その人の本当に伝えたいことをまとめて活字にしなければならない。

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