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人類脅かすプラスチック汚染に歯止めはかかるか 生産規制、問題プラ禁止めぐり条約交渉大詰め

東洋経済オンライン / 2024年11月23日 8時0分

「骨格に侵入したマイクロプラスチックはサンゴの死後も残り続けるため、数百年から1000年といった長期にわたって蓄積する可能性がある」と、磯辺教授は指摘する。

海鳥の半数からプラスチック添加剤検出

マイクロプラスチックや、さらに小さくなったナノプラスチックには健康リスクのある化学物質が含まれていたり、PCB(ポリ塩化ビフェニル)などの有害物質が付着していたりすることもある。わが国の汚染物質研究の第一人者である東京農工大学の高田秀重教授は「プラスチックは有害化学物質の運び屋の役目も果たしている」と説明する。

高田教授の研究室では、世界各地の研究者の協力を得て、世界各地に生息する海鳥の尾羽の付け根から分泌される脂のサンプルを収集。それらの成分を分析して、海鳥の体内に含まれる化学物質の濃度の測定を続けている。その結果、わかってきたこととして、「世界の海鳥の約半数からプラスチック添加剤が検出されている」(高田教授)。

高田教授は「世界規模でプラスチックによる汚染が広がっている」と警鐘を鳴らしている。そして、プラスチック汚染をできる限り少なくするためには、「プラスチックそのものに網を掛けて、全体の生産量や使用量を減らしていく必要がある」と指摘する。そうすれば、人体に懸念のある化学物質への曝露を抑えることができるからだ。

高田教授が主張する、生産量の総量規制は、今回のプラスチック条約交渉の最大の焦点になっている。

石油などを原料とするプラスチックは、生産の過程で温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)を大量に排出する。そのため、気候変動問題の観点からもプラスチック問題は重要だが、条約交渉では産油国を中心にプラスチックの生産量削減自体に強く反対する声がある。

他方、ヨーロッパ連合(EU)やアフリカ、南太平洋などの島嶼国は、条約で生産量の削減目標を定めるべきといった立場を取る。バイデン政権のアメリカも最近になって、EUなどと近い主張をするようになっている。日本は中間的な立場を取ってきた。

生産規制とともに重要なテーマの一つが、特定の化学物質・製品の規制のあり方だ。これまで環境中で残留性や生物蓄積性、生物や人体への有害性などが懸念される化学物質については、「ストックホルム条約」により規制されてきた。現在、国内で輸入、製造、使用されている数万種類にのぼるとも言われる化学物質のうちで、条約で規制対象となっている化学物質の数は数十種類にとどまる。

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