「またトラ」リスクは「トランプ四季報」で準備せよ 政治日程を考えれば「次のリスク」が見えてくる
東洋経済オンライン / 2024年11月23日 8時30分
その次は「夏」となる。
政権発足から半年後に来るのは通商問題だろう。トランプ氏は関税引き上げを公約にしているけれども、そのためにはさまざまな手続きが必要となる。第1期政権でも半年程度の準備期間を必要としたものだ。現在、財務長官人事の発表が遅れているところを見ても、経済スタッフの中でも意見の統一は簡単ではない様子。つまり、関税は政権発足からすぐに引き上げられるわけではないということだ。
次期トランプ政権としては、たぶん関税引き上げの用意を整えつつ、中国などを相手にした通商交渉を始めたいのであろう。そもそもアップル社のiPhoneも、日本製の部品や台湾製の半導体を使って、中国で組み立てられている。対中関税の引き上げは、アメリカ経済にとって確実に重荷となるはずだ。できれば中国側と交渉を進めて、何らかの実利を得るほうが得策となるはずだ。
もっともトランプさんのことゆえ、その辺のことはたぶん「決めてない」。彼の交渉スタイルはいつも「出たとこ勝負」である。時間がかかる「ネゴシエーション」ではなく、パパッと決断する「ディール」がしたい人なのだ。どういう風に転ぶかはまったくわからない。ともあれ、来年夏頃の米中交渉は見ものとなるだろう。
2025年の秋は長期金利上昇に注意
その次は「秋」ということになる。
秋には新年度予算の審議が始まる。10月1日から始まる2026年度予算の編成では、2025年末に失効する「トランプ減税」の延長を図ることになるだろう。同時に次期トランプ政権は、法人減税(35%から15%)も目指している。このことは企業部門にとっては朗報となるだろうが、景気過熱や財政赤字の拡大をもたらす恐れがある。
財政赤字が拡大すると、アメリカの長期金利が上昇することになる。来年秋頃にはアメリカの連銀による金融緩和も進んでいるだろうが、ここで財政が緩むようだとインフレ再燃の恐れが出てくる。ジェローム・パウエルFRB(連邦準備制度理事会)議長としては頭の痛いところである。ちなみにパウエル氏の任期は2026年5月まで。「またトラ」リスクに頭が痛い人の最たるものだろう。
この間、トランプ政権としては歳出の削減も図らなければならない。そのため、新たに「政府効率化省」(DOGE=Department of Government Efficiency)を設置し、経営者であるビベック・ラマスワミ氏とイーロン・マスク氏を起用する。このユニークなお二人がどんな力量を見せてくれるのか、お手並み拝見といったところだ。
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