トヨタ中国合弁、開発「完全現地化」で劣勢挽回へ 広汽トヨタ、中国のハイテク企業とも協業強化
東洋経済オンライン / 2024年11月29日 18時0分
日本のトヨタ自動車と中国の国有自動車大手、広州汽車集団(広汽集団)の合弁会社である広汽トヨタが、中国市場での劣勢挽回に本腰を入れている。
【写真】広汽トヨタの工場の生産ライン。現在は稼働率が低下している。
「中国市場向けのクルマの現地開発や中国のサプライチェーンの深掘りを進めることで、捲土重来を図る」。広汽トヨタの執行副総経理(副社長に相当)を務める文大力氏は、11月13日に開催された同社の設立20周年の記念式典でそう述べた。
文氏によれば、広汽トヨタは新型車の企画段階から開発、テスト、評価までの全プロセスを中国の開発チームで完結できる新たな体制作りを急いでいる。
開発期間を2年以下に短縮
それだけではない。開発体制の完全現地化と同時に、(クルマのスマート化の分野で)中国のハイテク企業とのパートナーシップも強化する。協業相手は通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)、ネットサービス大手の騰訊控股(テンセント)、自動運転技術のMomenta(モメンタ)および小馬智行(ポニー・エーアイ)、車載電池大手の寧徳時代新能源科技(CATL)、3次元センサー大手の速騰聚創科技(ロボセンス)などだ。
広汽トヨタは新体制のもとで開発した第1号モデル「鉑智3X」を2024年4月の北京モーターショーで初披露しており、2025年3月に発売する。さらに、第2号モデルを2026年初めにも投入する計画だ。
(訳注:鉑智3XはSUVタイプのEV[電気自動車]で、Momentaと共同開発した先進運転支援システムやファーウェイと共同開発した車載インフォテインメント[情報娯楽]システムを搭載する)
「中国の自動車市場は変化が早い。広汽トヨタでは新型車の開発に3年近くかかっていたが、これを2年以下に短縮する。将来は1年に2車種のペースで新型車を投入し、市場ニーズに応えたい」。文氏はそう意気込む。
広汽トヨタの年間販売台数は2年前の2022年に100万台を突破し、過去最高を記録した。だが、翌2023年から販売は減少に転じ、2024年に入って落ち込みが加速している。同社の2024年1月から10月までの販売台数は累計58万8000台と、前年同期比23.3%減少した。
苦戦の最大の要因は、中国自動車市場の急速なEVシフトへの対応が遅れたことだ。
「中国のEVブームは、ちょうど新型コロナウイルスが流行した期間に始まった。ところが、広汽トヨタは自動車産業の将来トレンドを見誤り、商機を逃してしまった」。文氏はそう率直に反省する。
新技術に対する考え方に落差
文氏によれば、外資系の合弁自動車メーカーと中国の新興EVメーカーの間には、新技術に対する考え方に大きな違いがある。
外資系メーカーは伝統的な製造業の常識にのっとり、新技術は無数のテストと手直しを経たうえでないと世に出せないと考える。これに対し、中国の新興メーカーの発想はインターネット企業に近い。自動運転システムやスマートコクピットなどの最新技術をクルマにいちはやく搭載し、絶え間ない改良を続けていけばよいという認識だという。
中国市場でEVやスマートカーが急速に普及している現状に鑑みれば、新興メーカーの考え方を中国の消費者が受け入れているのは明らかだ。見方を変えれば、外資系メーカーが(発想を一新して)中国のパートナーと共同開発したスマートカーは、中国市場のみならずグローバル市場で受け入れられる可能性を秘める。
(財新記者:翟少輝)
※原文の配信は11月14日
財新 Biz&Tech
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