60年前の「アジアっぽい東京」が今の姿になるまで 当時の写真から読み解く「街が変化した」必然
東洋経済オンライン / 2024年12月1日 12時0分
この頃しみじみと感じるのは「昭和は遠くなりにけり」ということだ。昭和最後の年1989(昭和64・平成元)年からすでに35年が過ぎ、当時を知らない世代も増えている。
そんな彼らには、昭和戦後の写真の中の東京が、アジアのどこか知らない街に見えたりするらしい。
このほど、来年で設立130周年になる東洋経済新報社の写真部に保管されていた昭和の街角写真がデジタル化された。本連載では、そこに写し出されている風景から時代の深層を読み取っていく。
初回となる今回は、1960年代の東京・浅草、千駄木などの写真を紹介する。
路面電車だらけだった東京
東京の街中を縦横に都電が走っていた時代を知る人も、もはや少数派になっているだろう。何しろ、都電が全廃されたのは昭和47(1972)年のことだから、50年以上前のこと。
【写真25枚】1960年代の浅草、千駄木はこんな感じ。路面電車が至る所で走っていた都心の町並みを写真で見る
現在、都電と言えば、早稲田―三ノ輪橋間をつなぐ都電荒川線のことを指すと認識されているが、昭和40年代(1965~1974年)に順次廃止・撤去されていった頃までの都電は、都内に張り巡らされた路線網を持つ基幹交通インフラだった。
まずご覧いただきたい写真は、1964年撮影。浅草・吾妻橋を渡る車両。「30」番の番号を車体前面に掲げた都電の行先表示板には、よく見ると「須田町」の文字がある。須田町とは、現在のJR神田駅と秋葉原駅の中間あたりだ。
【写真25枚】1960年代の浅草、千駄木はこんな感じ。路面電車がそこら中に走る東京の町並みを写真で見る
この「30」番の電車は、墨田区の東向島三丁目を起点として、本所吾妻橋を経て隅田川を渡り、その後、浅草、上野、外神田を経て須田町へと至っていた路線だ。
都電最大のターミナルは神田にあった
1955年前後の都電全盛期を知る世代に聞くと、当時の東京の人々はみな、この車体前面の番号で、都電の路線、行先を把握していて、人に目的地への行き方を教える時も「○番の都電に乗って、○○の電停で降りて」という具合だったそうだ。
また、神田の須田町、そしてその隣りの電停である万世橋は、戦前戦後を通して数多くの路線が集結していた都電最大のターミナルだった。この「30」番は濹東の向島の地から都心をつなぐ幹線的な路線だったということになる。
「30」番の電車は橋を渡っているところで、その背景には浅草の松屋デパートが見える。位置的に見て、この橋は隅田川に架かる吾妻橋だろう。橋の上では大規模な工事が行われているが、どうも都電の軌道を敷き直しているようだ。
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