イーストウッド作品が映画会社から捨てられた訳 94歳巨匠の最後の作品をまるでバックアップせず
東洋経済オンライン / 2024年12月1日 10時0分
容疑者の男性は、被害者の恋人。判決はあっさり出るだろうと思われたのだが、事件の詳細を聞くうちに、ジャスティンは、誰も知らない事実を自分が知っていることに気づく。しかし、自分の身を守るために、それを口にすることはできない。
製作予算もしっかりかけたが…
モラルの葛藤がテーマのこの映画は、イーストウッドらしく、ストレートで無駄がない。大人向けのしっかりしたドラマだ。メジャースタジオ映画としては決して高くはないが安くもない3000万ドルというまともな製作予算を出したことを見ても、ワーナーも作る価値はあると思ったのだろう。なのに、なぜこんなことになったのか。
「Variety」によれば、『Juror #2』は最初から配信用作品として製作されたのだが、テスト上映の結果が良かったため、オスカーの資格を得られるよう限定での劇場公開を決めたのだということ。その一方で、オスカーで大健闘することはないだろうとも判断されたようだ。キャンペーンにお金をかけないのは、それが理由のようである。
そう聞いても、今ひとつ納得がいかない。オスカーに入れるようにはしておくが、サポートを一切しないというのは、スタジオとフィルムメーカーの関係においてかなり異例だ。
ワーナーは伝統的にフィルムメーカーを大事にするスタジオで、中でもイーストウッドは神様のような存在だったのだから、なおさらである。それに、ずっとビッグスクリーンで映画を作ってきたこの巨匠の新作を最初から配信にするというのは、腑に落ちない。『Juror #2』の製作が決まった時の業界メディアの報道を見直しても、配信直行として作られるという記述はどこにも見られない。
いずれにしても、イーストウッドの最後の作品を劇場で見られなかったとしたら、映画ファンとしては残念だろう。ただし、ヨーロッパの一部では劇場公開され、フランス、イタリア、ベルギーでは3位、スペインでは4位デビューしている。この後も、ドイツ、オーストリアなどで公開されるようである。
ところで、背景はまるで違うものの、このアワードシーズンには、別の大ベテラン監督による作品も早々にレースから消えている。ロバート・ゼメキス(72)の『Here』だ。
トム・ハンクス主演作品にもプッシュなし
主演はトム・ハンクスとロビン・ライト。『フォレスト・ガンプ/一期一会』のチームが30年ぶりに集結するというのは、話題になった。この作品の北米配給権を持つソニー・ピクチャーズは、派手とはほど遠いものの、テレビスポットを含め、ある程度の広告をしている。
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