日本のゆるい職場で専門性獲得できる人の生き方 「石の上にも3年」戦略はもはや通用しない?
東洋経済オンライン / 2024年12月11日 15時0分
働き方改革による労働時間の短縮やリモートワークの普及、さらに転職や副業の一般化など、ここ10年で日本の労働社会のあり方が劇的に変化し、これまでのキャリアデザイン理論が通用しなくなっています。
本稿ではリクルートワークス研究所主任研究員の古屋星斗氏の新刊『会社はあなたを育ててくれない』より、職場では専門性の獲得が難しくなっている現状と、個々人が効率的に獲得できる方法について解説します。
成長するのにはシビアな時代になっている
私たち社会人にとって今はどんな時代かと言えば、2020年前後から劇的な進度で「選択とゆるい職場の時代」になったと言えます。どういうことかというと、現代は、2010年代までの終身雇用制度が健在だった時代と比べると明らかにキャリア選択の機会が増えていて、一方で労働時間は減り、OJTやOff-JTといった社内教育の機会も減少しているということです。
かつてのように、選択の機会が大きく2回(新卒での就職時と定年退職時)しかない“3ステージ人生”で、会社に拘束される時間が長い“きつい職場”だった時代は、キャリアデザインという点においては、見通しが立てやすく、周囲との差もつきにくいものでした。
それが今は、成長のための時間や機会を自分でつくり出していかなければならない、実はとてもシビアな環境にがらりと変わりました。それこそが、「選択とゆるい職場の時代」なのです。
最低必要努力量という言葉があります。それは、「人が何らかの専門性を発揮できるようになるまでは、一定量の努力(経験)が必要である」いう概念です。似た概念の言葉では、専門性を獲得するには1万時間が必要という「1万時間の法則」を耳にしたことがある人もいるかもしれません。1万時間という単位はあくまで仮定のものだとしても、何かの専門性を獲得するためには一定量の努力と時間が必要であることは、誰しも納得できるでしょう。
となると、“きつい職場”によって半ば強制的に経験の場を与えられることがなくなった“ゆるい職場”の時代において、キャリア戦略の最大の課題は以下のように考えられるはずです。
―では、どこでどうやって1万時間を獲得するのか?
―では、どこでどうやって最低必要量に達するべく努力を投資するのか?
専門性を獲得するための戦略が変わっている
「職業社会における自分の稀少性・専門性を獲得するために、一定の努力投資が必要である」という原則は、今も昔も変わりません。しかし社会の変化によって、この原則のために社会人がとるべき有効な戦略は、全く異なるものになろうとしているのです。
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