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バイデン「日鉄のUSスチール買収阻止」その後は? 最終的に判断を下すのはどこになるのか

東洋経済オンライン / 2024年12月12日 16時0分

従来、アメリカ大統領はIEEPAを真の国家安全保障問題にしか使用できなかった。しかし、トランプ氏はこの自制の規範を”破り”、IEEPAが想定していなかった目的のために発動した。

2019年、アメリカ議会がメキシコ国境の壁のための予算計上を拒否したとき、トランプ氏は不法移民をめぐってNEAを発動することで、議会に唯一の「財布の権限」を与えている憲法を無視した。そして、議会が他の目的のために計上した資金を壁の財源に振り向けた。

バイデン大統領も同様のことをしている。2022年、コロナ禍の緊急事態宣言を利用し、コロナ禍で人々の支払い能力が低下しているとして、学生1人当たり2万ドルまでローン返済を免除している。

IEEPAを利用して関税を引き上げることも

トランプ氏は今後、IEEPAを利用して、日本のような同盟国を含むあらゆる国に高関税を課すことを検討していると見られる。同法は国家非常事態において大統領が関税を課すことができると定めている。

トランプ氏は1期目に、「メキシコによる効果的な行動によって不法移民の危機が緩和される」まで、IEEPAを使ってメキシコに高関税を課すと発表した。しかし、メキシコが行動を起こすことに同意したと発表したため、結局発動はされなかった。

IEEPAの前身がこのような関税を課すために使われたのは、リチャード・ニクソン氏の時代だけである。同氏は1971年、ドル価値の急落が緊急事態であるとして、すべての輸入品に10%の関税を課した。アメリカの輸入業者がこれは本当の緊急事態ではないと訴えると、裁判所はニクソンを支持した。

仮にトランプ氏が関税のためにIEEPAを行使した場合、ある著名な法律事務所がウェブで発表したところによると、「国家安全保障と外交問題に関しては、裁判所は引き続き行政府に広く従う可能性がある」。

この法律はまた、IEEPAを使ってアメリカ人の海外投資と外国人の対米投資の両方を阻止することを認めている。トランプ氏は最初の任期中に、IEEPAを使ってアメリカの対中投資や中国の対米投資をすべて阻止することを検討した。しかし、結局は他の法的正当化手段を用いることになった。

私が知る限り、IEEPAを使って外国からの投資を阻止した前例は1つしかなく、そのための法的教訓から、日鉄を阻止するためにIEEPAを使おうとした場合の結果は不明である。

裁判所の判断に委ねられる可能性

トランプ氏はIEEPAを発動し、中国のSNSであるTikTokのアメリカでの運営を禁止した。しかし、この法律は情報を提供する企業を特に除外しているため、裁判所はトランプ氏に不利な判決を下した。この適用除外は日鉄には適用されない。

はたして日鉄とUSスチールは、トランプ大統領を阻止するための差し止め命令を得ることができるだろうか。

仮にトランプ大統領がIEEPAを使って合併や合併後の両社間の金融取引を阻止した場合、日鉄とUSスチールはこの裁判が決着するまで手続きを進めることができない。

そうした事態を避けるため、両社はほぼ間違いなく、裁判が進行している間はトランプ氏の命令が執行されないよう、裁判所の差し止め命令を得ようとするだろう。このような状況に対する明確な判例がないため、裁判官がそのような差し止め命令を認めるかどうかは不明である。

リチャード・カッツ:東洋経済 特約記者(在ニューヨーク)

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