インド、巨大な手つかず市場「低所得者層」を狙え ヤマ発、テラモーターズが挑む2輪・3輪の新事業
東洋経済オンライン / 2024年12月13日 9時0分
バハドゥールさんが毎日12時間乗るバイクは、今年6月から「Fae Bikes(フェーバイク)」という現地の事業者からレンタルし整備も任せているため、配送業に集中できる。このフェーバイクが保有する1400台の2輪EV(電動バイク)のうち200台はMBSIによりリースされたものだ。
「モビリティへのアクセスに障害がある低所得者層の就業ハードルを下げることで、貧困に苦しむ人たちを救いたい」。MBSIの中尾浩社長はそう力を込める。
最大のライバル、ホンダの2輪も貸し出す
MBSIは現在、インドの12の州と地域で事業を展開しており、物流やタクシー事業者など31の法人へ2輪、3輪、4輪をリースしている。
当初は、最終利用者に直接貸し出す事業を考えたものの、低所得者層を対象とするため信用リスクが高く、現地の法人パートナーを通じてリースするビジネスモデルに転換した。現在の車両保有台数は合計で約1万台、これを3年後の2027年末に約5万台に急拡大させる計画だ。
MBSIは、ヤマハ発動機にとって異端な新規事業とも言える。実は、MBSIが保有する2輪車両のうちヤマハ発動機製はごくわずかで、9割以上が他社製だという。「ホンダさんのバイクを欲しいと顧客が言えば、ヤマハのお金でホンダさんのバイクを買って使ってもらっている」(中尾氏)。
海外子会社の社名には通常ヤマハの「Y」の字を入れるが、MBSIだけは例外とした。MBSIが狙うのは新興国での社会課題解決だが、そのためには規模の拡大が不可欠。2輪メーカーとしての車両の縛りをあえてなくすことで、成長速度を優先した。
インドは年間約1700万台(世界の約3割)が売れる世界最大の2輪市場だが、ヤマハ発動機は販売台数シェアで5番手(4%)でしかない。インドではホンダのほか、現地企業のHero(ヒーロー)、TVS、Bajaj(バジャージ)などの競合がひしめき、価格競争も激しい。
そのためヤマハ発動機は、廉価で競争環境の激しいコミューターモデル(6万~9万ルピー=11万~16万円)の販売を大幅に縮小。2018年からは、スポーティーな高価格帯モデル(17万~19万ルピー=30万~34万円)の販売に特化するプレミアム戦略に舵を切り、インド事業の収益力を回復させている。
一方、MBSIが最終顧客のターゲットとするのは、年収50万ルピー(90万円)以下の「ボトム・オブ・ピラミッド」と呼ばれる低所得者層。社内ベンチャーとして、14億の人口の65%を占める低所得者層、その潜在的なマーケットの掘り起こしを進め、新興国の成長を取り込む構えだ。
保有車両の7割弱が他社製の2輪EV
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