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三菱UFJ銀行「貸金庫事件」が開けたパンドラの箱 「現金」を貸金庫の中に入れていたのはなぜ?

東洋経済オンライン / 2024年12月13日 7時0分

10月31日に発覚した三菱UFJ銀行の元行員による貸金庫からの資産窃取。その期間は4年半にも及んでいた(撮影:尾形文繁)

元行員が支店の貸金庫から顧客の資産を着服していた問題を巡り、三菱UFJ銀行は近く会見を開く。契約書類や貴金属などの貴重品を安全に保管できる場所と信じられてきた銀行の貸金庫。その信頼を揺るがす事態を招いた同行の経営陣は、何を語るのか。

【貸金庫の規定を見る】現金を貸金庫に入れていいのか?入れてはいけないのか?

三菱UFJ銀行のこれまでの発表によると、貸金庫からの資産の窃取は東京都内の練馬支店、玉川支店の2カ店で行われていた。管理職だった女性行員が行っていたもので、被害者は約60人、被害総額は十数億円に上る。

関係者によると、元行員が盗み取った多くは「現金」だった。同行は、貸金庫に格納できる対象を規約で定めて例示しているが、その中に現金はない。一方で、格納できないものは「危険物や変質、腐敗のおそれがある等、保管に適さないもの」としており、こちらにも現金の文字はない。

貸金庫に入れていいかどうかが明示されていない現金はいわば「グレーゾーン」だった。とはいえ、多くの顧客が「格納は問題なし」と判断したとみられる。

現金の格納は合理的な行動といえず

今回の事件では元行員が着服した金額の大きさや、最も安全と考えられてきた貸金庫からの窃取という犯罪行為に目が向きがちだが、もう一つ問われるべき視点がある。それは「なぜ銀行の貸金庫に現金を格納するのか」という疑問だ。

当然ながら銀行の支店には、現金を口座に預けられる窓口もあれば、ATMもある。貸金庫の契約者は口座を持っていることが前提なので、銀行の支店に現金を持って出向いたのならば窓口やATMから入金すればよい。それをわざわざ現金のまま貸金庫に入れている。

この到底合理的とは言えない行動から浮かび上がるのは、「表に出せない金」ではなかったのかという疑念だ。そのためか、多額の現金が窃取されたにもかかわらず、被害届があまり出ていないという。

金融ビジネスに詳しい弁護士は、「一般には公正証書や不動産の権利書などを入れている事例が多いと考えられる」としたうえで、「相続時の資産をごまかすため、あるいは現金での報酬など課税対象となる所得をごまかすために格納しているケースはあるかもしれない」と話す。

今回の事件の舞台となったのは、前述のとおり都内2カ店で、そこにある一部の貸金庫を勝手に開けたものとみられる。わずか2カ店の一部貸金庫に十数億円近い現金があったことを考えれば、同行の全支店の貸金庫、さらには銀行全体の貸金庫にはいったいどれほどの現金が潜んでいるのか。

「格納できない」としている銀行はほぼない

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