突如明かされた米空軍の新戦闘機 ウワサの「デジタル・センチュリーシリーズ」か?

乗りものニュース / 2020年10月2日 6時10分

ロッキード・マーチンが公式Webサイトに掲載している次世代戦闘機のイメージ画像(画像:ロッキード・マーチン)。

アメリカ空軍が、これまでにない新しい戦闘機開発の手法によるものと見られる技術実証機の飛行実験に成功したことを明らかにしました。従来の戦闘機開発を一変するかもしれないこのコンセプト、航空自衛隊も他人事ではなさそうです。

すでに飛んでいた米空軍 次世代戦闘機の技術実証機

 2020年9月15日(火)、アメリカ空軍のウィル・ローパー調達開発担当次官補が、アメリカ空軍のF-15C/D戦闘機とF-22A戦闘機の後継と位置づけられている次期戦闘機「NGAD(Next Generation Air Dominance:次世代制空戦闘機)」の技術実証機が、すでに飛行していたことを明らかにしました。

 ローパー次官補は、技術実証機がどのような戦闘機か、どのメーカーが開発したのか、いつごろ初飛行を行なったのかといった点は一切明らかにしていませんが、VR(仮想現実)などのデジタル設計開発技術と最新の製造技術を駆使したことで、技術実証機に要求される性能が決定してから1年足らずで初飛行にこぎつけた、と述べています。

 アメリカ空軍は2010年代初頭から、F-15C/DとF-22Aの後継機の検討を行なってきました。しかし、開発するのであればどのような戦闘機とすべきなのか、新規開発をしなくてもF-35の能力向上でまかなえるのではないか、そもそも有人戦闘機を新規開発する必要があるのか、といった様々な意見が出された結果、空軍部内ではコンセプトをまとめきれていませんでした。

 こうした事態を受けローパー次官補は2019年10月に「デジタル・センチュリーシリーズ」という、従来とは大きく異なる戦闘機の開発および調達のコンセプトを明らかにしていました。今回、同次官補が述べたNGADの技術実証機は、デジタル・センチュリーシリーズのコンセプトに則って開発されたものと見られています。

次々と発表された「センチュリーシリーズ」のように…その利点は?

 アメリカ空軍は1954(昭和29)年から1959(昭和34)年までの5年間に、F-100、F-101、F-102、航空自衛隊にも採用されたF-104、そしてF-105、F-106という、6種類の戦闘機を就役させており、これらは「センチュリーシリーズ」と呼ばれています。

「デジタル・センチュリーシリーズ」は、デジタル設計技術と最新の製造技術を駆使して、おおよそ8年ごとに、その時点の最新技術を盛り込んだ新戦闘機を戦力化し、すでに就役している戦闘機はおおよそ16年程度で退役させるという構想で、デジタル技術の活用により、センチュリーシリーズに近い周期で新戦闘機を開発し戦力化していくというコンセプトです。

 ローパー次官補は、このデジタル・センチュリーシリーズには3つの利点があると述べています。

 現在のアメリカは中国を最大の脅威と位置づけており、その中国は第5世代戦闘機のJ-20を戦力化し、さらにその先を行く第6世代戦闘機の開発に着手していると公言しています。また戦闘機に限らず、中国の新兵器の開発と戦力化の速度はアメリカを凌ぎつつあります。

 そのような中国でも8年おきに新戦闘機の開発と戦力化を続けていくことは困難であると見られており、ローパー次官補は3つの利点のひとつとして、アメリカ空軍がデジタル・センチュリーシリーズのコンセプトを採用すれば、戦闘機の分野で常に中国に対して優位に立つことができると述べています。

「デジタル・センチュリーシリーズ」は戦闘機開発を一変させるか

 また、現代の戦闘機の運用寿命はおおむね30年程度に設定されていますが、アメリカ空軍は運用開始から15年を経過したあたりから、維持費が毎年3%から7%程度、上昇しているとの統計を発表しています(もちろん、これはアメリカ空軍に限った話ではありません)。加えて、戦闘機の能力の相対的な低下を防ぐために行なわれる近代化改修の経費も、大きなものになっています。

 デジタル・センチュリーシリーズの開発費や機体の製造費は、従来の戦闘機に比べて高くなると見積もられているものの、16年程度で退役させることにより、維持費と近代化改修費が低減できることから、従来の手法で開発、製造された戦闘機を30年運用するよりも10%程度、総経費が低減できるとも見積もられており、ローパー次官補はこれをふたつ目の利点として挙げています。

 さらに、デジタル・センチュリーシリーズはデジタル設計技術と、3Dプリンターなどの最新の製造技術を用いるため、これまで戦闘機の開発、製造を行なってこなかった企業の新規参入が容易になります。ロケットや宇宙船の開発と打ち上げを行なうスペースXや、電気自動車の開発、製造を行なうテスラを率いるイーロン・マスク氏のようなベンチャー企業家にも戦闘機への参入の機会を与えることで、健全な競争ができることを、ローパー次官補は3つ目の利点として挙げています。

 とはいえ、デジタル・センチュリーシリーズのコンセプトが本当に採用されるのかはまだ不透明です。ただ、F-15やF-35などのアメリカ空軍の主力戦闘機を導入し、F-2戦闘機を後継する「次期戦闘機」を従来の手法で開発を進めている航空自衛隊にとっては、今後の推移がかなり気になるところなのではないかと筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は思います。

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