「光る君へ」最終回「物語の先に」 「生き抜くことの尊さ」を描いた物語【大河ドラマコラム】
エンタメOVO / 2024年12月20日 11時40分
これらはいずれも、時につらい思いをしながらも、人生を全うしたからこそつかむことができたものだ。そして彼らはみな、生き切ったと言わんばかりの清々しい表情をしていた。それぞれの登場人物たちが次々と姿を見せる最終回は、さながらカーテンコールのようだった。
そのクライマックスとなったのが、まひろと道長の別れだ。自分の死期を悟った道長から、「この世は、何も変わっていない。俺は一体、何をやってきたのであろうか」と問われたまひろは、次のように答える。
「戦のない、太平の世を守られました。見事なご治世でありました。それに、源氏の物語は、あなた様なしでは生まれませんでした」
まひろの「源氏物語」も含め、それぞれの登場人物たちが手にした人生の成果は、道長が太平の世を守ったからこそ得られたともいえる。だが、その道長はもういない。道長亡き後、旅に出たまひろは再会した双寿丸(伊藤健太郎)から「東国で戦が始まった」と聞くと、「道長さま、嵐が来るわ」と呟き、力強い決意のまなざしで真っすぐに歩き出す。道長が守った太平の世の後に訪れる波乱の時代を生き抜こうとする覚悟がうかがえる最後の姿だった。同時にそれは、混迷する今の時代を生きる私たちに向けたメッセージでもあったように思う。
生き抜くことで、得られるものはある。
劇中では、コロナ禍を思わせる疫病の蔓延なども描かれたが、「光る君へ」は、現代にも通じる「生き抜くことの尊さ」を描いた物語だったのではないだろうか。
(井上健一)
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