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今の時期に知っておきたい!「発酵」と「腐敗」の違いは!?

ウェザーニュース / 2019年6月14日 6時25分

ウェザーニュース

梅雨シーズンがやってきました。雨の日が多くなる6月の平均気温は22.4℃、平均湿度は80%(気象庁・東京・2018年)となっています。

しかし、梅雨どきの高温多湿がもたらしてくれる恩恵の一つに「発酵」があります。いま、こうした発酵食品は整腸・美肌など健康効果に注目が集まっています。一方、高温多湿が原因となる食品の「腐敗」。「発酵」とは、どう違うのでしょうか。

文化によって発酵の考え方は異なる

発酵・醸造学の泰斗、小泉武夫東京農業大学名誉教授・発酵文化推進機構理事長によると、文化を異にする民族であれば「発酵」と「腐敗」のカテゴリーも違う場合があるようです。

「たとえば、16世紀に来日したイエズス会の宣教師ルイス・フロイスはその著書の中で、『われわれにおいては、魚の腐敗した贓物は嫌悪すべきものとされる。

日本人はそれを肴(さかな)として用い、非常に喜ぶ』と記述しています。フロイスが面食らったのはイカの塩辛やこのわた(ナマコの腸の塩辛)でしょうか」(小泉先生)


有名なところでは、イヌイットのキビヤックがあります。アパリアス(海鳥/ウミスズメ類)をアザラシの皮袋にぎっしり詰めこみ、地中に長期間埋めて作る伝統的な漬物の一種。強烈な匂いと独特の食感に私たち日本人は腐敗物としか考えられないでしょう。

しかし、冒険家の植村直巳さんは大好物だったといわれています。

人にとって有益か有害か

あえて『発酵』と『腐敗』の明確な違いを上げるとすると、細菌など微生物の種類で線引きすることができると言います。

「どちらも微生物の作用で有機物が分解され、新しい物質が生成されるということでは同じ現象といえます。しかし、この現象が人間にとって有益な場合を『発酵』、有害な場合を『腐敗』と区別しています。

細菌など微生物の種類で線引きすることができます。パンの発酵にはイースト菌、納豆の発酵には枯草菌、ヨーグルトの発酵には乳酸菌が使われます。それに対して、ブドウ球菌やボツリヌス菌などは食品を腐敗させ、食中毒を引き起こすことが知られています」(同)

「発酵」で生まれる新たな栄養素

「『発酵』は食品の旨みや味わいを増し、保存性を高めるだけでなく、新たな栄養素を生み出すため、『発酵食品は体に良い』とされています。たとえば、納豆のネバネバはタンパク質分解酵素の『ナットウキナーゼ』で、血栓(血液のかたまり)の原因になるタンパク質(フィブリン)を分解したり、体内で生み出される血栓溶解酵素を活性化して、血栓を予防・融解する効果があります。

味噌は原料の大豆を麹菌や乳酸菌、酵母などの微生物で発酵させてつくりますが、その過程で生成される『メライジン』は優れた抗酸化作用があり、体内で発生する余分な活性酵素を取り除いてくれるのです。

また、最近の研究によると、漬物の乳酸菌が花粉症対策や免疫力向上に効果があるという報告もあります。日本は発酵食品を生み出す気候風土に恵まれています。先人から受け継いだ発酵食品を大事にしたいものです」(同)


発酵にふさわしい気温について宮城大学金内誠教授は、「酵母の働きに湿度は関係しません。酵母が働くには、25℃~30℃の気温だけが要件になります。甘酒は30℃。乳酸菌は25℃~37℃。納豆菌は50℃でも生育するのです」といいます。

もっとも危険な食品とされるふぐの卵巣を糠に漬けて発酵させることで猛毒を抜くという奇跡的な技法を受け継ぐ「あら与」(石川県白山市)7代目当主の荒木敏明さんは、日本の高温多湿な梅雨がなければ私たちはこれまで続けてこられなかった、といいます。

発酵と腐敗は、どちらも高温多湿がもたらす微生物の働きだったのですね。

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