【鬼怒川決壊から4年】どのように避難すればいいのか?
ウェザーニュース / 2019年9月10日 4時45分
2015年9月10日12時50分ごろ、茨城県常総市を流れる鬼怒川の堤防が約200mにわたって決壊。決壊箇所からあふれ出した濁流は、家を流失させながら常総市の3分の1の面積に相当する4000ha(東京都杉並区は3402ha)を浸水させ、住民は避難する間もなく孤立しました。
ヘリで1300人以上が救助
鬼怒川上流の栃木県では前日から激しい雨が降り続き、各地で24時間雨量が500mmを超えていました。常総市は10日未明からいくつかの地区に避難指示を出していましたが、浸水した鬼怒川東地区全域に避難指示が出たのは堤防決壊から18分後の13時8分でした。
避難が遅れて孤立した住民は窓やベランダから助けを求め、ヘリによる救助は1339人、地上部隊による救助は2919人に及びました。人的被害は死者2人、市内の住宅は全壊53戸、大規模半壊1575戸、半壊3475戸、床上浸水148戸、床下浸水3072戸(計8593戸)にのぼりました。
ベランダでタオルを振って助けを求める人、屋根に登って救助を待つ人、車の屋根の上で難を逃れた人たちが自衛隊のヘリやゴムボートで次々に救助されました。電信柱にしがみつくようにしていた男性もヘリに収容されました。
決壊した堤防から流れ出した濁流が住宅を次々押し流すなか、びくともしなかった住宅が目を引きました。流れてきた住宅がぶつかっても耐えたのです。インターネット上でも話題になりました。しっかりした基礎工事をしていた住宅は、流されなかったのです。
防災拠点の市庁舎も浸水
常総市庁舎が浸水したことも人々を驚かせました。東日本大震災(2011年)で大きな被害を受けた築50年の旧市庁舎は解体され、隣接する敷地に新庁舎が2014年11月に完成したばかり。その市庁舎が10日から11日朝にかけて1m以上浸水しました。地面に置かれていた非常電源も浸水したため、自衛隊から電源を借りるなどして情報収集に当たったといいます。
記録的短時間大雨情報と避難のしかた
鬼怒川決壊では避難の遅れによって危機的状況に追いやられることを教えてくれました。避難指示の遅れについては、常総市は「決壊は想定していなかった。われわれの予測だけでは十分な対応がとれなかった」と語っています。
しかし、その後の水害でも避難遅れは続きました。たとえば、2018年9月の西日本豪雨で河川が決壊した倉敷市真備町地区では、面積の3分の1に当たる1200haが浸水し、51人が犠牲になりました。倉敷市は深夜になって真備町地区に避難指示を出しましたが、その直後に堤防が決壊したのです。
地震は突然起こりますが、河川は雨の降り方、水位の上昇に伴って避難準備、避難勧告、避難指示などが発表されます。さらに、私たちは近年、頻発する記録的短時間大雨情報に注意をはらい、避難指示を待たず明るいうちに避難することを考える必要があります。
避難する場合でも、(1)単独で行動しない、(2)水路や狭い道に近づかない、(3)車での移動はしないです。また、夜間であれば無理に外へ出ないで2階あるいは斜面などの反対側の部屋へ移ることです。
鬼怒川決壊の3〜8倍の水害が毎年発生
鬼怒川決壊により常総市は約4000haが浸水し、約8600戸が家屋被害を受けました。2012〜18年の全国の水害の被害状況を見ると、毎年1万ha以上の面積が被害を受けていることが分かります。鬼怒川決壊の浸水面積の3〜8倍、家屋被害は2〜7倍に及びます。
大雨、長雨、暴風雨、台風、高潮、融雪など、さまざまな原因で水害は起こりますが、9〜10月は秋雨前線と台風の接近で水害が発生しやすい時期です。自分が住んでいる場所にどのような水害が起こり得るのか予測し、水害が迫ったらどう行動するかを考えてみる機会にしてください。
参考資料など
「『平成27年関東・東北豪雨』に係る洪水被害及び復旧状況等について」(国土交通省関東地方整備局)
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