【熊本地震から4年】新型コロナでもデマ潰しに奔走、大西市長は災害時の情報をこう見極める
ウェザーニュース / 2020年4月14日 11時0分
いまから4年前、2016年4月14日に発生した熊本地震。その直後には特にインターネットのSNSなどを通じて、さまざまなデマや誤った情報が拡散されました。大きな災害の直後、人々に直近あるいは将来に向けての不安感が高まっている中で、こうした情報の拡散は大きな問題とされてきました。
今回の新型コロナウイルス感染に関しても、同じような状況が起こっています。私たちはそうしたデマや誤情報と、どのように付き合うべきなのでしょうか。
SNSで「ライオンが逃げた」
熊本地震の際に最も大きな話題となったのは、「動物園からライオンが逃げた」という「フェイク・ニュース(虚偽・ねつ造された情報)」の、SNSによる拡散でした。「おいふざけんな、うちの近くの動物園からライオン放たれたんだが 熊本」との文面で、偽造した市街地を歩くライオンの写真を投稿。1万7000回以上もリツイートされたといいます。
これによって、実際にライオンを飼育していた最寄りの熊本市動植物園への問い合わせの電話は100件を超え、投稿者は熊本県警に同園への偽計業務妨害容疑で逮捕されました。
大西一史(おおにし・かずふみ)・熊本市長は、「ツイッターなどのSNSは、情報の速達性や拡散力が非常に高いツールのひとつ考えています。しかし、熊本地震発災時には誤報やデマなど市民行政を混乱させる情報が出回ることが絶えず、全体の情報を把握するが大変困難でした」と、当時を振り返ります。
「私自身も含め、被災地の人たちの気持ちは高ぶり、平時の精神状態とは異なっていました。とにかく、送る側も受け取る側も冷静になることが大切だと感じます。ツイッターで情報をリツイートするときは、ふた呼吸おくぐらいの心の余裕が必要です。
さらに、ふだんから情報を『確かめる癖』もつけておきたいものです。発信者が公式なアカウントかどうか、公的機関などが出している情報かどうかを再確認してみることも大切です」(大西市長)
災害が発生すると、政府や被災地域の自治体でもツイッターなどのSNSを活用して情報発信しています。個人で情報を発信・拡散するときは、報道や行政機関のウェブサイトも含め、信頼できる情報源で情報の真偽を確かめ、冷静に対処するようにしましょう。
新型コロナウイルスでも拡散したデマ
新型コロナウイルス関連でも、各地の日赤病院の医師を語り、「現場ではすでに医療崩壊のシナリオも想定されています」といった、根拠のない内容の情報が拡散しているなどの報告がなされています。熊本市でも新型コロナウイルスの感染拡大に関連して「トイレットペーパーが品薄になる」などのデマの拡散がみられたそうです。
「トイレッペーパーやティシュなどの買い占めが起こり、市指定ごみ袋も店頭から消えました。すぐに正しい情報を発信することが必要だと考え、日本家庭紙工業会に確認し、『国内で製造されているので影響はありません。ごみ袋も在庫は数カ月分あります』とツイートしました。私のツイートをそのまま店頭に貼り出したドラッグストアがあったりリツイートも加わったりして、デマに惑わされない正確な情報が伝わり、すぐに終息に向かいました」(大西市長)
情報リテラシーの格差が拡大!?
目的に応じて情報を集め、整理し、活用する能力を「情報リテラシー」といいます。大西市長は熊本地震が発生した4年前に比べて、「情報リテラシーの格差が当時より広がっている」とみています。
「スマホがさらに普及したことで、情報が正しいかどうかを確認する人が増えた反面、出てきた情報を簡単に信じてしまうユーザーも増えたのではないかと感じています。普及すればするほど、惑わされる人が増えると思います。高齢者を含めたSNSに慣れていない人たちの情報リテラシー強化には、まだ一定の時間がかかると思います」(大西市長)
見聞きした情報の精査を
災害が発生したとき、平時の精神状態とは異なる状況で、どのように情報と向き合えばよいのでしょうか。
「ウソも多いのですが、ツイッターなどのSNSは情報をしっかり選択できれば有効なツールです。さらに、テレビなど複数のメディアをクロスさせながら確認してみることも必要です。私は緊急時の情報を把握する場合、知っている人の一次情報を大切にします。ふだんから信頼できる発信者を見つけておくことは、有事の際の手助けになるはずです」(大西市長)
情報通信セキュリティー事業を進める日本データ通信協会(酒井善則理事長)は、「災害時は不安な状況が続く中で『役に立ちそう』と感じた情報に出合うと、『みんなに伝えるべき』と判断し、その信頼度にかかわらず友人や知人へ伝えようとします。友人や知人から得た情報は、一般的にその価値を高く見てしまうことが、デマ拡散の理由です」と言います。
「真偽の分からない情報が拡散すると、本当に必要な災害支援に関する情報を阻害する原因にもなりかねません。未確認情報のメールやツイートを見たときはまず、『デマかもしれない』と疑い、真偽を確かめるようにしましょう」(日本データ通信協会)
緊急時だからこそ、情報を誰かに伝えるときは、責任を持って発信するように心がけたいものです。
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