なぜ、ひな祭りのお吸い物に「蛤(はまぐり)」を入れるの?
ウェザーニュース / 2021年3月3日 5時0分
3月3日はひな祭り。ひなあられにちらし寿司など、華やかな行事食が食卓に並びますが、蛤(はまぐり)のお吸い物も、ひな祭りの食事の代表的なメニューです。それにしても、なぜひな祭りに蛤なのでしょうか? 歳時記×食文化研究所の北野智子さんに伺いました。
はまぐりは縁起の良い貝だった
「蛤がひな祭りの行事食となったのは、平安時代に貴族の間で始まった『貝合わせ』に由来するといわれています。この遊戯は、蛤の貝殻の内側に花鳥や人物などの美しい絵を描き、裏返して並べて、同じ絵柄同士を合わせて遊ぶもので、『源氏物語』にも登場します。
二枚の貝殻は同一個体のもの以外は決して合わないことから、夫婦和合や貞操の象徴とされ、ひな祭りや結婚式の膳に出されるようになったとか。また、江戸時代の享保年間(1716〜1736年)に、八代将軍・徳川吉宗が、この貝の謂われから、婚礼の祝膳に蛤の吸い物を発案したともされています」(北野さん)
一方、古くから春の行事として、ひな祭りの日には家族や仲間で近くの磯や浜に出て飲食をして遊ぶ「磯遊び」という風習もあったそうです。
「そのため、ひな祭りの蛤のお吸い物は、採った貝を神さまに供え、皆で食べて祝った名残りともいわれています」(北野さん)
日本最古の料理記録に登場!?
ひな祭りの行事食として欠かせない蛤を私たちが食べるようになった歴史は古く、縄文時代まで遡るとされています。
「『蛤』の名前の由来は諸説ありますが、『はま(浜)のクリ(石の意)』=『浜栗』という説が有力だそうです。
古くは縄文時代より日本人に好まれ、『日本書紀』(720年成立)にも登場しています。『日本書紀』の景行天皇五十三年の条で、磐鹿六鴈命(いわかむつかりのみこと)が、天皇へ『白蛤(うむぎ/蛤の古名)の膾(なます)』を献上したところ、天皇は大いに賞味され、このきっかけで天皇の料理人になったというのです。また、これが日本最古の料理の記録とされています。
さらに、江戸時代になると、東海道・桑名の焼蛤が名物となり、『その手はくわなの焼蛤』という言葉が流行って知名度は抜群だったようです。
蛤は美味しいだけではなく、16世紀に明で編まれた『本草綱目』には、「肺を潤し、胃を開き、腎を増し、酒を醒ます」とあり、身体にも良く、左党にも嬉しいものでした」(北野さん)
4月頃までが旬とされている蛤。ひな祭りではもちろん、これからの春の時期には、古くから伝わる旬の風味を味わってみてはいかがでしょうか。
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