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熊本地震から5年 熊本市長に聞く、熊本地震は今後の災害対応にどう生かせるか

ウェザーニュース / 2021年4月14日 5時46分

ウェザーニュース

2016年4月14日と16日の2度にわたって発生した最大震度7の熊本地震から5年。発生当時現場は災害にどう対応し、その後どのように復興が進められたのか。さらにそれらの実体験を今後の防災対策にどう生かしていくべきなのか。

危機管理に携わる自治体のトップとして人口約74万人の熊本市民の“いのち”を預かり、復興に努めてきた大西一史(おおにし・かずふみ)市長に伺いました。

99%以上が仮設住宅から恒久的な住まいへ移行

――避難者や被災者の生活支援といった復興の状況はいかがでしょうか。

「2020年12月にSNSを通じて実施した復興に関する意識調査では、約95%の方が熊本地震からの復興を感じていると回答されており、市民の皆様からも復興の進捗(しんちょく)を実感していただいていると認識しています。

最大で約1万2000世帯に及んだ仮設住宅等の入居世帯数は、2021年3月末時点で17世帯となり、99%以上の方が恒久的な住まいへ移行されました」(大西市長)

――市民のシンボルであり、全国的にも注目を集める熊本城の現状は。

復旧工事が完了した熊本城天守閣(2021年4月6日撮影) 写真/時事

「2020年度は国指定重要文化財『長塀』の復旧工事が完了し、城内の建造物復旧第一号となりました。また、”復興のシンボル”である天守閣の復旧工事と各階の展示リニューアルが完了し、2021年4月26日から内部をご観覧いただけるようになります。

今後は、2018年に策定した『熊本城復旧基本計画』に基づき、飯田丸五階櫓(やぐら)下要人(ようにん)櫓台石垣をはじめとした石垣の解体・修理工事を行うとともに、宇土(うと)櫓などの国指定重要文化財建造物や戌亥(いぬい)櫓、馬具櫓などの復元建造物の復旧にも取り組んでいきます。

ぜひ多くの皆様に、一定程度感染が収束していれば熊本にお越しいただき、約5年ぶりとなる天守閣の最上階から復興が進んだ熊本の街を眺めていただきたいと思っています」(大西市長)

最悪の状況を想定し意図的に大きい声・強い口調で指示

――地震発生直後、現場でどのような対応を取られたのでしょうか。

「多くの市民が大混乱の中、不安と動揺の中で助けを求めていましたので、職員には臨機応変に対応できるよう、現場ですぐに判断ができるよう、『被災者にとっていいことはなんでもしていい』と指示を出しました。市民に徹底的に寄り添うことも伝えました。

職員への指示は、意図的に大きい声・強い口調で行うようにしました。職員が『何をしたらいいか分からない』という状況の中で、『すぐに動かなければならない緊急事態だ』ということを理解させる必要があったからです。

また、報告を受けた被害より『実態はもっとひどいはずだ』と、常に思うようにしていました。最悪の状況を想定していれば、震災対応は間違いないと思ったからです」(大西市長)

――災害発生時には迅速で正確な情報の収集が最も重要だといわれています。

大西市長は発災直後からツイッターを駆使して、市民・被災者の生の声に触れるとともに自らも積極的に発信した(写真提供/熊本市)

「阪神・淡路大震災が発生した時に私は内閣官房副長官の秘書として総理官邸にいましたが、官邸では被災の全体像がなかなか把握できない状況でしたので、その経験から、『待っていても現場の情報はつかめない』と考え、積極的にできるだけ早く情報を集めなければ、と思いました。

地震発生直後は電話回線が利用できませんでしたが、SNSは大きな混乱もなく通話・通信が可能でした。職員にタブレット端末を持って市民の避難情報を確認してもらい、現場の映像を送るよう指示しました。

発災直後の情報が少ない中でも、『把握している限りの情報を伝えること』が市民に安心してもらう第一歩だったと考えています」(大西市長)

――4月16日の本震発生は土曜日で、ほかの自治体との連携も難しかったのでは。

「本震が起きた朝4時頃、当時の熊谷俊人(くまがい・としひと)千葉市長(現・千葉県知事)がメールで『何かできることがあれば言ってください』と申し出てくださいました。そこで必要な物資を書き込んだ手書きのメモの写真をメールで送り、可能な限り水、食料、毛布、粉ミルク、オムツなどを送ってほしいとお願いしました。

また、私は災害対策で手がいっぱいになると想定し、ほかの指定都市の市長にも情報を共有してもらうようお願いし、全国からの応援につなげることができました」(大西市長)

――当時を振り返って「課題」といえる点は。

「地域防災計画では『プレスセンターを開設すること』と定められていますが、当時はそこまで意識が届かず対応できませんでした。

また、指定避難所と指定外避難所の違いについて、市民も行政も認識が不十分だったため『なぜ指定外避難所には物資が届かないの?』といった声が寄せられたり、情報の錯綜(さくそう)・混乱も多数生じたりしました。

避難所の運営については、数百人しか在籍していない学校に数千人が避難するなど、キャパシティーを超える避難者が押し寄せ、結果的に入りきれなかった人が車中泊をするケースが見られました」(大西市長)

震災後、熊本市役所内に集められた支援物資の様子(写真提供/熊本市)

災害を「自分事」と捉え「自助」「共助」意識で災害への備えを

――5年が経過したいま、改善された点は。

「震災後に毎年実施している震災対処実動訓練では、プレスセンターの開設・運営訓練を組み込み、初動時における報道機関への速やかな情報提供体制の構築に努めています。

また、LINE株式会社と情報活用に関する連携協定を締結し、災害時における即時性・適時性のある災害情報の発信等に取り組んでいます。職員の安否・参集確認や避難物資等の配送指示についてもLINEを活用した訓練を行うなど、SNSを利用したさまざまな形での情報発信・災害対応のあり方について、研究を進めています。

より円滑に避難所への物資供給を行うことができるよう、物資供給計画及び物資供給計画対応マニュアルを策定し、発災後の各フェーズに合わせた物資供給の流れを明確化しています。

避難所の運営については、施設管理者と行政職員と地域の連携を図るため各校区に『校区防災連絡会』、各避難所に『避難所運営委員会』を設立し、2021年1月末現在で、それぞれ93%、68%の結成率となっています」(大西市長)

熊本地震から2年後の2018年4月15日に行われた震災対処実動訓練(写真提供/熊本市)

――市民の防災意識に変化はありましたか。

「災害時における公助の限界の中で、備蓄や建物の耐震化など自らの命は自ら守るといった自助、地域が主体的に行う避難所運営などの共助、さらに水道やガスなどライフラインの復旧には、企業間ネットワークが活躍するなど、自助・共助への意識が高まってきています。

一方で、昨年12月に実施した意識調査では、約7割の方が『熊本地震の記憶や教訓を忘れがちになっている』と回答されています。5年の節目で、再度当時の厳しかった状況を思い出していただき、備蓄なども含め防災意識を向上させる取り組みが必要だと感じています」(大西市長)

――災害を経験した現場の首長として、今後の防災に対してメッセージを。

「発災直後から、国内外の多くの皆様から多大なるご支援をいただき、感謝申し上げます。熊本地震で得た経験や教訓を次世代へ伝承させていくことは、被災した自治体の重要な責務と考えています。

近年、全国各地で大規模な災害が頻発する中、全国の皆様にも災害を『自分事』として捉えていただき、『自助』、『共助』の意識を高め、災害への備えを行っていただきたいと思います」(大西市長)

大規模災害はいつ我が身に降りかかってくるかわかりません。熊本地震の経験を貴重な教訓として、一人ひとりが防災に対する意識を高めておきたいものです。

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