ホタルは幼虫やサナギ、卵も光る!? 5つの大疑問
ウェザーニュース / 2021年5月19日 5時0分
梅雨の時季が近づくと、各地でホタル(蛍)が光り輝きながら舞い飛ぶ姿を目にすることができるようになります。日本では夏の季語や風物詩として古くから親しまれてきたホタルですが、その生態などについてはなおたくさんの“謎”が潜んでいるといいます。
どうしてホタルは光るのかなど、5つの疑問について、山口県下関市立「豊田ホタルの里ミュージアム」学芸員の川野敬介さんにお話を伺いました。
(1)ホタルはなぜ光るのでしょうか?
「ホタルが発光するしくみは、化学反応によるものです。ホタルの場合は体内の『ルシフェリン』という物質が酸素と結びついて光を出し、『ルシフェラーゼ』という酵素がその反応を手助けしているのです。
ゲンジボタルの成虫の場合、ルシフェリンは身体全体に、ルシフェラーゼは尻の部分に白く見える『発光器』の中に存在します。ルシフェラーゼはホタルによって性質に違いがあり、よく見られる黄緑色以外にも、黄色や赤色などの色を発光する種もいます。なお、ホタルの光は熱をもっていません。
同じゲンジボタルでも、明滅の間隔が東日本では4秒、西日本・四国では2秒、そして、特異的に五島列島では1秒と大きな違いがあり、気温や個体密度が高いほど短くなるといわれています。間隔の差は遺伝子がそれぞれ異なるためと思われますが、その明確な理由はいまだにわかっていません」(川野さん)
(2)幼虫やサナギも光るってホント?
「ホタルはサナギや幼虫、卵までもが光を発します。ホタルの発光は成虫の場合は基本的にオスとメスの出会いのためと考えられますが、その必要がない産卵を終えたメス、さらにはサナギや幼虫、卵までもが発光しますが、交尾前の成虫以外の発光の役割というのはよくわかっていないのです。
最近の研究では、ホタルのサナギは尻だけでなく頭も光り、尻と頭では発光の仕組みが違っていることが発見されています。いずれにしても、まだまだホタルが光るしくみや役割には、多くの謎が残されているのです」(川野さん)
(3)ホタルの幼虫はどこに棲(す)んでいるのですか?
「ゲンジボタルに関してですと、卵は川の水面に突き出た木や石のコケに産みつけます。そして、ふ化した幼虫はすぐに水面に落下します。そこから、幼虫は水中での生活がはじまります。幼虫は川の底にいて、カワニナという淡水貝類を捕食して大きくなります。ソメイヨシノが咲く頃の雨が降る夜に上陸して土に潜ってサナギになります。
土に潜った幼虫は、幼虫の姿のまま(前蛹/ぜんよう)で3週ほど過ごし、幼虫の皮を脱いで(蛹化/ようか)サナギになります。そして、約1週間サナギの姿で過ごし、サナギの皮を脱いで(羽化/うか)成虫になります。
(4)ホタルは成虫になってからどれぐらい生きられるのですか?
「ゲンジボタルは野外で1週間程度です。他のホタルもだいたい同じくらいです。日本にはゲンジボタルやヘイケボタル、ヒメボタルなど、約50種のホタルが生息しています。体長約15mmと大型で光が明るいゲンジボタルはその代表とされ、本州・四国・九州本土のほか、対馬や五島列島(いずれも長崎県)などの離島にも生息します。
ゲンジボタルは地域や気温にもよりますが、おおむね5月末から6月中旬に発生し、20時15分頃から21時30分頃にもっとも活発に活動(発光)します。22時頃からはあまり光を発しなくなります」(川野さん)
(5)ゲンジボタルとヘイケボタルの名前の由来は?
「ゲンジボタルの由来には、誰の目にも闇夜にはっきり見える『顕示(けんじ)』や、山伏を意味する『験師(げんじ)』、『源氏物語』や源氏の武将・源頼政(みなもとのよりまさ/1104-1180年)に由来するとか、『蛍合戦(ホタルがっせん)』と呼ばれるホタルの群舞を源平合戦になぞらえたなど、少なくとも5説ほど挙げられますが、どれが由来となったのかはわかっていません。
そもそも、ゲンジボタルという名自体が江戸時代には使われた形跡がなく、近代になってから付けられたようですが、誰がどのような理由でつけたのかわかっていないのです。また、それに対峙(たいじ)する形でゲンジボタルより光が弱く、小さい似たホタルにヘイケボタルと付けられたと考えられ、この名についても近代に付けられたようですが、誰がいつ付けたのかわかっていません」(川野さん)
新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が発令されるなか、今年も各地で楽しみにされてきたホタル祭りなどが中止されています。もし身近でホタルが見られる環境にあったら、「3密」と暗い中での足元の安全に注意したうえで、ホタルの舞いを楽しんでみてはいかがでしょうか。
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