マダニは都市部の公園にも生息? 注意すべき場所と予防法や対処法
ウェザーニュース / 2021年9月14日 5時2分
秋の活動で用心したい害虫の1つがマダニです。特に今年はマダニが媒介する感染症・「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」の感染例が増えるなど、マダニの健康被害が懸念されています。注意すべき場所や対策について、虫ケア用品大手・アース製薬に教えていただきます。
マダニの危険が身近に迫る!?
マダニの危険が身近になっているといいます。マダニといえば、農作業やアウトドアで注意すべきものとされていますが、必ずしもそれだけではないというのです。
「マダニはシカやタヌキなど野生生物のいる、自然環境が豊かな場所に多く生息しています。草むらややぶに潜み、宿主となる生物が来るとくっついて、吸血するのです。しかし、近年の野生生物の都市化により、ひとの多く住んでいる都市部でも相談が出始めています。
また、マダニが媒介し致死率も高いウイルス感染症のSFTSも、症例は西日本に集中していますが、SFTS陽性のシカはいまや北日本にも生息しています。外来種であるアライグマにマダニがつくこともあり、SFTSウイルスを運んでしまうのです。アライグマは現在、日本全国に分布を広げています。
さらに感染リスクを上げる要因として、犬や猫などのペットがあります。マダニは機会があればペット動物にもつくことがあります。今後、東日本や都市部で感染者が出る可能性も十分あると考えられます」(アース製薬研究部の有吉立さん)
マダニは目に見え、吸血する
そもそもマダニとはどんな害虫なのでしょうか。ダニやツツガムシとの違いもよくわかりません。
「マダニは目に見えるダニです。一般的に室内に生息するヒョウダニやコナダニの体長が0.2〜0.4mmに対して、マダニは成虫で3mmと大きく、吸血するのが特徴です。
主に森林や草むらなどで生息しており、卵→ 幼ダニ→ 若ダニ→ 成ダニと成長しますが、各ステージで宿主動物に寄生して吸血します。宿主となるのは、哺乳類や鳥類、一部の爬虫類。メスだけが吸血する蚊とは違い、オスも吸血します。
メス成虫は十分吸血すると膨らんで大きくなり、宿主からぽろりと落ちて産卵します」(有吉さん)
数日で1cm以上になることもあるほど吸血するというから驚きです。
「同じように野山もしくは河川敷で刺されることのあるツツガムシも、ダニの仲間です。マダニと見た目が似ていますが、成虫で体長1mm~1.5mm、幼虫で0.2mmと小さめで気づきにくいです。
ツツガムシの若虫と成虫は土壌中に生息し、トビムシなどの昆虫の卵を食べています。しかし、幼虫期の一度だけ、ネズミなどの哺乳動物に吸着して、幼ダニの時期に血ではなく体液を吸います」(有吉さん)
忘れてならないのは、マダニが吸血するだけでなく感染症を媒介する可能性があることです。
「前述のSFTSのほか、日本紅斑熱やQ熱などの感染症を媒介することがあります。ツツガムシも、幼虫時に『デング熱』を媒介するので、注意したいです」(有吉さん)
近所でも草むらなどに注意を
「マダニが多く生息するのは自然が豊かな場所です。宿主となる生物がいそうな場所や通り道には十分な注意が必要です。キャンプ場や野山だけではなく、畑やあぜ道、民家の裏庭や裏山など、身近な場所でも気をつけましょう。市街地も自然が豊かであれば、油断はできません。
マダニは犬や猫などペットの動物にもつくので、マダニ媒介の感染症に感染したペットと濃厚接触することで、人へ感染するリスクがあります」(有吉さん)
マダニの被害を受けないためには、アウトドアや野外作業では長袖・長ズボンなど肌を露出しない服装を基本とし、虫除け剤も併用します。
「マダニには、人体用虫除け剤を使いましょう。忌避効果のある有効成分ディートが含まれており、蚊やツツガムシ対策にもなります。
注意したいのは、きちんとムラなく塗ることです。塗り残しや塗りムラがあると、マダニはそこをめがけて来ます。手のひらにたっぷりスプレーしてから、顔や首筋などにも、まんべんなく塗り広げましょう。シートタイプやジェルタイプ、アルコールゼロのタイプもあるので安心です」(同研究部・浅井一秀さん)
そのほか、犬の散歩から帰ったら、マダニがついてないかチェックするようにしましょう。
咬まれていても取ってはダメ!
万が一マダニに刺されてしまったら、どうしたらよいのでしょうか。
「マダニを見つけても、無理に引き抜かないでください。頭が残ったり、マダニの体液が逆流したりする恐れがあります。見つけた場合はそのままにして速やかに病院へ行きましょう」(同研究部・浅井一秀さん)
秋は屋外で過ごすのが心地よいものですが、マダニが活発に活動する時期でもあります。きちんと対策したうえで楽しむようにしましょう。
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