まだ小手調べだから…/原ゆみこのマドリッド

超ワールドサッカー / 2018年10月14日 13時30分

写真:Getty Images

▽「本大会を除けば強いのは昔からよね」そんな風に私が納得していたのは土曜日、ウェールズとの親善試合に勝ったスペインがこれで27試合、無敗を続けているという記事を読んだ時のことでした。いえ、ロシア・ワールドカップ(W杯)では彼ら、開催国ロシアの前にベスト16で敗退しているんですが、PK戦による負けは国際サッカー連盟(FIFA)によると、敗戦にカウントされず。従って、最後の黒星が2016年ユーロのベスト16、イタリア戦になるため、こういう数字が出てきたようですけどね。大体がして、予選では無敗に近い成績で本大会に出場するのが、近年のスペインのデフォルトとなれば、ロペテギ監督(現レアル・マドリー)、イエロ監督を経て、W杯後から受け継いだルイス・エンリケ監督が3連勝で好発進と言っても本当に強いチームが戻ってきたと手放しで喜ぶには早すぎる?

▽え、それでもウェールズ戦はいい内容だったんだろうって? そうですね、元々、イスコやカルバハル(マドリー)ら、負傷で招集されなかった選手がいたのに加えて、来週月曜にUEFAネーションズリーグの公式戦を控え、かなりのメンバーをチェンジしたスペインでしたが、やはりリーグAとBの格の差というのもあったんでしょうね。ずっと苦手にしていた5人DF体制を敷かれたにも関わらず、序盤から積極的に攻めていったところ、前半8分には早くも先制点をゲットすることに。そう、ガヤ(バレンシア)のシュートは間が悪く、サウール(アトレティコ)に当たってしまったんですが、こぼれ球をパコ・アルカセル(ドルトムント)が見事なgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)にしているんですから、大したもんじゃないですか。

▽おまけに19分にはスソ(ミラン)が蹴ったCKをノーマークでセルヒオ・ラモス(マドリー)がヘッドして追加点を取ると、29分にも今度は敵がエリア内でクリアミスしたボールを撃ち込んで、パコ・アルカセルが自身2本目のゴールを入れているって…はい、思い出しました。実は彼、バレンシアからバルサに移籍して、メッシ、ルイス・スアレス、ネイマールの控えとなる前にはユーロ2016予選など、いいところでゴールを決めていて、この日の2点で代表14試合で8得点。プレー時間を増やすため、今季、レンタルで移ったドルトムントでも7得点と当たっていたため、24日のチャンピオンズリーグ(CL)グループリーグ3節ではアトレティコも今季は出場機会が減っている香川真司選手より、彼の方に気をつけないといけないと思ってはいたんですけどね。

▽まさかここまでゴールづいていたとは恐ろしい。同様にマドリーでの出番の少なさから昨季、チェルシーに行ったモラタもこの日はCFとして先発していましたが、残念ながら、こちらにはあまりチャンスが回らず。ええ、後半28分にもスソのCKからヘッドでのゴールがあったんですけど、ラモスから代わったバルトラ(ベティス)が決めていますからね。実際、他にもFWは途中出場したイアゴ・アスパス(セルタ)やロドリゴ(バレンシア)がいるため、今回は招集リスト発表直前のCLクラブ・ブルージュ戦で負傷したジエゴ・コスタ(アトレティコ)も含め、毎試合、ルイス・エンリケ監督は誰を起用するかで大いに頭を悩ますことになりそうな。

▽その後、ベイル(マドリー)はパルコ(貴賓席)で見学していたものの、終盤にはウェールズがヴォークス(バーンリー)のゴールで1点を返したため、スコアは1-4となりましたが、何より良かったのは、「Con 0-3 hemos seguido haciendo lo mismo/コン・セロ・トレス・エモス・セギードー・アシエンドー・ロ・ミスモ(0-3になってもウチは同じように続けた)」とルイス・エンリケ監督も言っていたように、前半で勝負を決めたスペインが後半になってもダレなかったこと。いえ、ところどころでは、基本が「En la seleccion la idea es la de descansar con la pelota y buscar los espacios/エン・ラ・セレクシオン・ラ・イデア・エス・ラ・デ・デスカンサール・コン・ラ・ペロータ・イ・ブスカル・ロス・エスパシオス(代表ではボールを持って休みながら、スペースを探すというのがアイデア)」(サウール)なせいか、W杯でのようにパスを外縁で回しているだけの退屈な時間もあったりはしたんですけどね。

▽それでも明らかに縦パスを通そうという試みは以前より増えていましたし、攻撃陣もボールが敵方にある時はしっかりプレスをかけたりと、あのロシア戦にあった倦怠感がなくなっていたのは新監督の功績かと。え、その日はブスケッツ(バルサ)の代役を立派に務めたロドリ(アトレティコ)も「Para nosotros no era un amistoso, sino un examen importante/パラ・ノソトロス・ノー・エラ・ウン・アミストーソ、シノ・ウン・エクサメン・インポルタンテ(ボクらにとっては親善ではなくて、大事な試験だった)」と言っていたように、まだ今のサイクルに入ってメンバーが固定していないのもいい緊張感を保つ原因になったんじゃないかって?

▽そうですね、何よりルイス・エンリケ監督になって顕著なのは、9月の最初の招集リストからして、かつて黄金期のスペイン代表では主流だったバルサ勢がブスケッツとセルジ・ロベルトの2人だけに激減。加えてこの日は後者が負傷で呼ばれず、ブスケッツも温存されため、カーディフのプリンシパリティ・スタジアムのピッチにはバルサの選手が1人も登場しなかったのは特筆すべきかと。だってえ、ただの背番号とはいえ、この日はイニエスタ(ヴィッセル神戸)の着けていた6番をサウールが、チャビ(アル・サッド)の8番をコケが着けていたんですよ。よりによって、アトレティコのカンテラーノ(ユース組織出身選手)コンビがスペイン代表伝説のMFコンビの後釜になるなんて、私もちょっと時代の変化についていけない気がしたものの…。

▽まあ、今はそれでもいいです。翌金曜にマドリッドに戻ったチームはラス・ロサス(マドリッド近郊)のサッカー協会施設で2回の非公開セッションを行った後、土曜の午後はフリータイムに。どうやら前回、ルイス・エンリケ監督に連れられて行ったエスケープルーム(謎解きをしてバーチャル空間を抜け出すゲーム施設)が癖になってしまったか、ブスケッツ、ガヤ、バルトラ、チアゴ(バイエルン)、アスピリクエタ(アーセナル)らがセントロ(市内中心部)のラ・カサ・デ・パペルで目撃されたなんて話もありましたが、チームは日曜にイングランド戦の行われるセビージャ(スペイン南部)に向かい、午後7時からはベニト・ビジャマリン(ベティス)でファンも見られる前日練習をする予定となっています。

▽うーん、ルイス・エンリケ監督は「スタメンのヒントは今日、出なかった選手とも言えるが、当たるのは4人か5人だろうね」とウェールズ戦の後、記者たちを煙に巻いていましたが、その方向で行くと、ブスケッツ、アセンシオ、ナチョ(マドリー)、マルコス・アロンソ(チェルシー)などが確定。気になるのは好調、パコ・アルカセルがリピートするのかといった辺りですが、何せ、金曜にはクロアチアとイングランドがスコアレスドローだったため、ここでスペインが引き分け以上だと、ほぼ来年6月に開かれるファイナルフォー(ネーションズリーグ、グループA王者を決める準決勝と決勝)出場が確実になるみたいですからね。この3試合で計12得点したgoleada(ゴエアダ/ゴールラッシュ)体質のスペインが今度は何点取ってくれるのかも楽しみなんですが…どうにも今年から始まったこの大会の位置づけがまだ中途半端なため、ファンとしてもこの快進撃にどこまで喜んでいいのか、微妙なんですよね。

▽そしてそこここで代表戦が開かれている今週、マドリッドの5チームはどうしていたかというと。いやあ、このparon(パロン/リーガの停止期間)に一番、巻き返しが必要とされているのはここ4試合、勝ち星がなく、次のレバンテ戦、CLビクトリア・プルゼニ(チェコ)戦の結果次第ではクラシコ(伝統の一戦、バルサ戦のこと)前にロペテギ監督解任もありうると言われているマドリーなんですが、ビッグクラブというのはかくも辛いもの。今回も各国代表に大量14人が出向しているため、バルデベバス(バラハス空港の近く)でのセッションには、RMカスティージャ(マドリーのBチーム)の選手たちがヘルプとして駆けつけることに。

▽ただ朗報もあって、この成績不振が始まる前に急性盲腸炎の手術を受けたイスコ、0-3と大敗したセビージャ戦でケガをしたマルセロが着々と回復、来週土曜のレバンテ戦に間に合いそうなことですが、まだ様子がわからないのはベンゼマとベイル。うーん、前節アラベス戦のハーフで交代した前者には全治10日間という意見と2、3週間という意見があるため、早くてクラシコに間に合うかといったところでしょうが、アトレティコとのマドリーダービーで筋肉疲労を起こし、CLのモスクワ遠征を休んだベイルはアラベス戦で復帰したものの、再び途中でギブアップしていますからね。代表には行ったものの、ウェールズのライアン・ギグズ監督によると、火曜の公式戦、アイルランド戦出場も難しいようです。

▽それでもただの筋肉疲労と言い張られてしまうと、もうクラシコまで温存しない限り、頼りになる戦力になってくれないんじゃないかと悲観してしまいますが、さて。とりあえず、マリアーノやルーカス・バスケスは残って練習に励んでいるため、ロペテギ監督も後はアセンシオやセバージョスがケガしないで戻って来ることを祈るばかりといったところでしょうか。ちなみにカルバハルは全治1カ月の重傷のため、当分、リハビリが続くことになります。

▽一方、前節にはお隣さんに勝ち点差1をつけ、バルサと同じ勝ち点となって3位に上がったアトレティコとはいうと。いやあ、こちらも11人が代表に行っているため、マハダオンダ(マドリッド近郊)のセッションもこじんまりとしたものになっていたんですが、何せ今週はシメオネ監督まで、手術を受けた父親に付き添いに母国のアルゼンチンへ帰ってしまっていませんでしたからね。加えてジエゴ・コスタ、ヒメネスはリハビリ中、9月のモンテネグロ代表の試合でケガして帰って来て以来、グラウンドに姿を現していないサビッチ、リーガ開幕戦で痛めたヒザを鍛え直しているビトロと、何とも寂しい状況だったようですが、大丈夫。

▽週が明ければ、選手たちもだんだん増えていくはずですし、コスタやヒメネス、ビトロは来週土曜のビジャレアル戦までにはプレーできるようになるはずとあって、やはりこちらも怖いのは代表戦でケガをする選手が出ないかどうか。とりわけグリーズマン、リュカ、レマルの3人が参加しているフランスなど、火曜にドイツとのネーションズリーグの試合があるため、用心が必要かと思いますが、同日、埼玉で日本代表との親善試合があるウルグアイ代表のゴディンも長旅の疲れが心配ですよね。

▽え、そんな中、3、4名しか各国代表に呼ばれていない弟分チームたちはさぞかし、いい練習ができたんじゃないかって? そうなんですが、エン・ナシリ(モロッコ)、オメロウ(ナイジェリア)、ルニン(ウクライナ)が欠けたメンバーで木曜、エイバルと親善試合を行ったレガネスは3-2で負けてしまうという残念な結果に。ペジェグリーノ監督はこの金土日とチームに3連休を与え、月曜から再び、降格圏の18位を抜け出すため、土曜のバレンシア戦に向かってシュダッド・デポルティバ・レガネスでのセッションを始めることになります。

▽そのレガネスに前節負け、19位になってしまったラージョはカクタ(コンゴ)、アドビンクラ(ペルー)、ラス(ギニア)、ディミトリビッチ(マケドニア)が留守なんですが、こちらは日曜にヘタフェとの連続ミニダービーに挑むのに加え、エスタディオ・バジェカスのスタンド閉鎖のため、延期された3節アスレティック戦の開催が24日(水)午後7時に決定。ミチェル監督はこちらも見据えて準備を進めないといけないことに。うーん、本来、ホーム2連戦というのは稼ぎどころなんですが、まだ今季、1部に戻って来てから、バジェカスのファンは勝利を祝えていませんからね。この2週間がいい気分転換となってほしいものですが…。

▽そう、相手のヘタフェもマドリッド勢なだけに私もどっちを応援したらいいか、内心複雑なんですよ。一応、彼らだけは13位と危険地帯にいないとはいえ、ここ4試合、白星から見放されているのが辛いところ。今週は毎日、きっちり午前10時半から練習していたチームからは柴崎岳選手、ジェネ(トーゴ)、マキシモビッチ(セルビア)、アマト(セネガル)が各国代表に出向いています。週中には協議委員会の審理も出て、前節レバンテ戦で退場となったポルティージョが2試合、累積警告となったジェネが1試合の出場停止処分となってしまったのもが逆境ですが、ここはボルダラス監督に頭を捻ってもらうしかないですかね。


【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

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