誤審問題について一言/六川亨の日本サッカーの歩み

超ワールドサッカー / 2019年5月28日 12時45分

写真:(c) J.LEAGUE PHOTOS

今週のコラムは、先週に引き続き殿堂掲額者の候補3人のプロフィールを紹介する予定でいた。しかし、決定はまだ先の話でもあり、浦和対湘南戦の“誤審”についてJリーグの理事会を取材したのでこちらを紹介しようと思う。

改めて触れるまでもなく、湘南の杉岡大暉の放ったシュートが右ポストを痛打し、左サイドネットに触れて完全にゴールラインを割ったにもかかわらず、山本雄大主審はノーゴールと判定した上でプレー続行を促した。

山本主審は副審ともインカムで確認したが、ボールがネットに吸い込まれず、跳ね返ってきたため「左ポストに当たった」と判断してゴールを認めなかった。そのシーンを現場で目撃した村井満チェアマンは「スタジアムの誰もがスマホで確認し、知らないのはレフェリーだけという前提に変わった。浦和の選手も認識していた」と誤審を認めた。

後日、山本主審は左ポスト際のプレーが選手と重なり目視できなかったことを正直に明かした。そして上川徹元JFA(日本サッカー協会)審判委員長は、「その場の雰囲気からゴールと認定することはできない」と山本主審をかばった。

“世紀の大誤審”と言うのは簡単だが、汚名をきせられた山本主審には、個人的に“不運”だったと思っている。サイドネットに当たったボールが跳ね返った原因は不明だが(ネットの外のペットボトルに当たったようにも見えたが、ボトルは動いていないので真偽は不明)、シュートしたボールにスピンがかかっていて、それが右ポストに当たってさらに逆回転がかかったかもしれない。

そして違和感を覚えたのは、現役のJリーガーが自身のツィッターで審判批判を表明したことだ。もともとサッカーは“ミスのスポーツ”である。シュートミスに始まり、パスミス、トラップミス、判断ミスをしない選手は皆無だろう。なのに、自分のミスを棚に上げ、ここぞとばかりに審判を批判するのは天に向かってつばを吐いているようなものだ。

「選手はプロだから生活がかかっている」とも言うが、試合に負けても日常生活にさほど支障はないだろう。しかし今回批判の矢面に立たされた山本主審の家族はどうなのか。そもそも試合中は判定にクレームをつけ、主審の目を盗んでシャツを引っ張ったり、痛がるふりをして時間稼ぎをしたりするなど、日頃は主審を欺こうとしている選手も少なくない。そうした前提を含めて成立しているのがサッカーではないだろうか。

誤審に目くじらを立てて騒ぐのはファン・サポーターであり、メディア関係者だけで十分だ。

今回の誤審を受け、湘南の真壁潔会長は「ニューマンエラーなので、人間力を上げていくしかない」と語ったそうだ。Jリーグの理事会では「VARもアデショナル・アシスタント・レフェリー(AAR=追加副審)もお金はかかるが、8月からAARを導入する。予算はある一定の金額を超えれば理事会の決議が必要になるので、やるなら7月の理事会になる」と村井チェアマンは導入に前向きだ。

もともと審判委員会はJFAの管轄下にあり、JリーグはJFAから審判団を派遣してもらっている。そこでJリーグでも金銭的な負担でより正確なジャッジを実現できるよう前向きに考えている。

さらに村井チェアマンは、「FIFA(国際サッカー連盟)はVARの養成期間を定めていて、J1全試合で導入するには養成に2年かかる。このため2021年にJ1全試合で導入したい」とのプランも明らかにした。

最後に村井チェアマンは誤審の現場を目撃して次のような感想を述べた。

「海外では(選手が失点を認め)失点から始めようという例もある。勝負に徹しようというクラブもあれば、レフェリーの判定に従うのがフェアプレーという考え方もある。選手が一番戸惑っているのではないでしょうか。(浦和の選手は)リスタートしなければいけないと思ったのかもしれないので、私は選手を責められない。判定は判定だが、あまりに異様な雰囲気だったので、ブレイク(中断)してもよかったのではないでしょうか」

一度下った判定は覆らないものの、チェアマンの意見に賛成だ。


【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。

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