スコアレスドローでもメリットのあったカメルーン戦/六川亨の日本サッカーの歩み

超ワールドサッカー / 2020年10月13日 8時50分

写真:Getty Images

先週9日の日本対カメルーン戦は、これといった見せ場もないまま0-0のドローに終わった。両チームとも1年ぶりの代表マッチのせいもあるが、そもそも日本に限らず代表戦に好ゲームを期待するのは間違いである。

年間の活動は3、6、9、10、11月の5ヶ月に限られ、さらにIMD(国際マッチデー)は2週間しかない。このため週末と週中の2試合と、その前後の3~4日しか練習時間は取れない。ここに日本のように海外からの移動を含めれば、練習時間はさらに限られる。

これでは「コンビネーションの熟成」をしている時間などほとんどない。そこに今回はコロナが追い打ちをかけた格好だが、海外組によるヨーロッパでの試合は0-0のドローとはいえメリットも少なくなかった。

まず両チームとも(ケガ人を除けば)コンディションが良かった。日本で親善試合を開催する際は、来日するチームはもちろんのこと、日本の主力選手も海外から参戦するのでコンディションがいいとはとても言えない。各国のリーグ戦のスケジュールにもよるが、試合前日に帰国する選手がいたりする。これでは1試合しか出場できず、結果としてコンディションを崩すために来日したようなものだ。

さらに対戦相手にしても、2年前の9月から始まった欧州ネイションズリーグ(偶数年に開催)のため、日本は“客を呼べる”ヨーロッパ勢を招待することはできなくなった。森保ジャパンにしても南米や北中米の国々との対戦ばかり。さらにこれは森保ジャパンに限らず、それ以前から親善試合に来日するチームはコンディションが万全ではないこともあり、手を抜くこともしばしばだった。

そんな相手に、例え大勝しても強化に役立ったかと言えば首をひねらざるを得ない。実際、日本はカメルーンと過去3勝1分けだが、ガチンコ勝負だったのは2010年南アW杯のグループリーグ(本田の決勝点で1-0)くらい。残りの3試合はいずれも日本で開催されたものだった(2001年のコンフェデ杯と03年と07年のキリン杯)。

しかし今回の対戦では、選手も全員がヨーロッパでプレーしており、なおかつ遠い極東での試合ではなくヨーロッパということで多少は注目度もアップしたのだろう。後半25分過ぎに運動量が落ちて日本の反撃を許したものの、それまではサポートの早さと的確さで複数のパスコースを作り、ショートパスをつないで日本を苦しめた。

ボールを失えば、すぐに攻守を切り替えて奪いに来る。ヨーロッパのサッカーのスタンダードを実践するあたり、彼らの本気度がうかがえた。ポルトガル人のコンセイソン監督は「11月にアフリカ・ネーションズ杯の予選でモザンビークと戦うための準備」と日本戦を位置づけていたが、その言葉通り「個の力」に頼らない洗練されたサッカーを披露した。

そんなカメルーンに対し、日本はボールポゼッションで劣勢に立たされたが、それこそ森保監督が望んだシチュエーションだったはずだ。準優勝に終わった去年1月のアジア杯、グループリーグで敗退した今年1月のUー23アジア選手権でも、森保ジャパンはボールポゼッションでアジア諸国に劣勢を強いられた。それだけアジア各国のレベルが上がっていることの裏返しでもあるだろう。

と同時に、それでもアジア杯では勝利を収めて決勝まで勝ち進んだ。サッカーはゴールを競うスポーツのため、日本はもうアジアにおいてもボールポゼッションにこだわる必要はないと個人的に感じている。劣勢の試合であってもいかに結果を出すか。そのために必要なのがショートカウンターであり、セットプレーの精度である。

こうした視点から試合を分析すれば、ヨーロッパでのマッチメイクはW杯を想定した格好のテストの場である。そして相手CBのミスから伊東が右サイドを突破し、大迫の放ったヘディングシュートや、右CKから吉田のヘッド、あるいは終了間際の久保の直接FKが決まっていれば3-1の勝利を収めただろう。

前述したように、代表チームの練習時間は限られている。コンビネーションを熟成する時間はほぼないと言っても過言ではないだろう。このため集合したら、意思の疎通――カウンターの意識付けーーを図ることと、セットプレーの確認くらいしかできないのが現実である。

では、カメルーン戦で3-1の勝利を収めていたら手放しで喜んだかというと、たぶんこちらも否定しただろう。例えば「結果だけで内容のない勝利」と。「結局ケチをつけたいだけなのか」と言われてしまうと返す言葉もないのだが……。

海外組に限らず国内組のトップレベルの選手も、状況に応じて選択しなければならないプレーは理解していると思われる。さらに戦い慣れたポジション以外にも複数のポジションでプレーできる柔軟さもある。あとは球際の激しさ、フィジカルコンタクトの慣れということになるだろう

そうした上で、「違いを生み出せる特別な選手」がいる。それが中島であり久保であり、最近は三笘だと思っている。「個の力」で突破できるのはもちろんだが、中島は日本の攻撃のスイッチを入れるだけでなく、南野や堂安の輝きも引き出せる。

久保は、右サイドでプレーした際に、堂安と違いカットインだけでなくタテへの突破がある。さらにセンターでも左でもプレーできるフレキシブルな選手だ。彼らが両サイドに位置することで、システムに関係なく攻撃の選択肢は広がるだろう。この2人に加えて、三笘も得意のドリブルがどこまで通用するのか見てみたい選手である。

国内組の三笘は別の機会に譲り、中島は今回招集されていない。となると「違いを生み出せる」のは久保しかいない。コートジボワール戦では彼がスタメン起用されることと、どんな違いを生み出すのかに期待してキックオフを待ちたい。

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